研究課題/領域番号 |
19K02162
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
樂木 章子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00372871)
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研究分担者 |
杉万 俊夫 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (10135642)
藤井 厚紀 福岡工業大学短期大学部, ビジネス情報学科, 准教授 (10364100)
村社 卓 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80316124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中山間過疎地域 / 鳥取県智頭町 / 住民ボランティア / コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究では、ある中間過疎地域(鳥取県智頭町)において展開されている住民ボランティア組織を主体としたまちづくりの事例に着目した。具体的な研究項目は、①個人のボランティアから始まった活動がボトムアップで組織化され、まちづくりの一翼を担うに至った活動の歴史、および、そのプロセスにおいて活動を促進・阻害した要因を分析すること、および、②地域資源の発掘や地域課題の解決におけるボランティア組織の活動の成果と、これが行政や一般住民の生活に与えたインパクトを明らかにすることである。 2019年度は、1984年から開始された鳥取県智頭町における住民ボランティアの35年間の取り組みを2期に分けた上で、その前半に当たる2001年までの17年間を時系列に取りまとめた。この第1期(1984年~2001年)は、住民ボランティアの活動が、集落という単位のコミュニティに定着するまでの時期である。 この住民運動は、1984年当時、背景を異にする二人の偶然の出会いから開始されていた。いかにして「ごく一握りの資産家や有力者に牛耳られるまま、新しい試みの一切を拒絶する地域の体質」を打破していくかという熱い思いを共有することが、まちづくりの第一歩となった。やがてこの二人は、周囲に奇異の目で見られながらも、役場に冷たくあしらわれながらも、今で言う「地域資源の発掘」や「若い世代の育成」といった事業を次々と積極的に立ち上げ、小集団に成長していった。やがて、これらの事業は行政が認める形で、集落という単位に浸透し、それぞれの集落がおのおのの地域資源の発掘に取り組んでいくに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で扱う中山間地域の根底にある「過疎」という現象について、文献等に基づき、整理した。具体的には、1950年代後半から始まった経済成長に遡り、日本において過疎が進行していく流れを、社会経済的、心理的な要因から考察した。 鳥取県智頭町における住民ボランティアによるまちづくりは、1984年から開始され、以来、35年間の歴史と実績がある。この間の活動を資料や現地の住民リーダーを対象にインタビューに基づき概観した。その結果、この35年間の活動は、大きく分けて、第1期、第2期に分けられることが示唆された。第1期は、1984年に開始された2名のボランティアによる活動、これをベースに発展した約30名からなる住民ボランティア有志による活動、そして、これらの活動が役場によって認知され、集落単位の活動へと拡大していく時期である。本年度は、活動が行政と住民による協働体制へと発展していくプロセスについてつぶさに分析した。 また、集落単位の活動が地区単位、さらに、町単位へとボトムアップで拡大していく第2期への流れを把握するために、鳥取県智頭町5地区のうち、最も活動の歴史と実績がある「山形地区」と「山郷地区」を対象としたインタビュー調査を実施した。とりわけ、それぞれの地域風土、地域資源、具体的な活動内容、今後に向けた方針など、取りまとめた。さらに、町単位のボランティア組織による政策立案システムによって、現在、智頭町全体の主力事業にまで発展した「森のようちえん」を対象としたフィールド調査を行い、事業の立ち上げのきっかけ、現在までのプロセス、課題、および、今後の展望について明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に実施した2地区(山形地区と山郷地区)に加え、那岐地区、土師地区、富沢地区においても、それぞれの地区の地域風土、地域資源、具体的な活動内容、今後に向けた方針等を、住民ボランティアリーダーを対象とした調査研究を実施する。 また、これらの住民ボランティア組織、ないし、その活動が、一般の地域住民に対してどの程度浸透し、地域への愛着、定住意識、生活不安に関わっているのか等を把握するためのアンケート調査およびインタビュー調査を実施するというスケジュールで研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによる影響で、現地調査が進捗しなかったため。今後、県外出張ができるようになった際には、本年度予定分の現地調査を併せて実施する予定である。
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