研究課題/領域番号 |
19K02162
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
樂木 章子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00372871)
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研究分担者 |
杉万 俊夫 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (10135642)
藤井 厚紀 福岡工業大学短期大学部, ビジネス情報学科, 准教授 (10364100)
村社 卓 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80316124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域活性化運動 / ボランティア組織 / 地区振興協議会 / 地域経営 |
研究実績の概要 |
本研究は、典型的な中山間地域である鳥取県智頭町において展開されている地域活性化運動に着目し、ボランティア組織(地区振興協議会、以下、地区振)と行政がイコール・パートナーシップの関係を構築し、地区振が政策の立案のみならず実行過程にまで参加するという新しい住民自治や地域経営について明らかにすることで、「ボランティア」についての新しい視座や可能性を提言しようとするものである。 具体的な研究計画は、①個人のボランティアから始まった活動がボトムアップで組織化され、まちづくりの一翼を担うに至った歴史をトレースすること、②地域資源の発掘や地域課題の解決における地区振の活動の成果と、これらが地域の一般住民に与えたインパクトを明らかにすることの2点である。 ①については、主に地区振や行政から提供された資料を分析して取りまとめ、②については、2021年度に地区内の全集落を対象とした一般住民へのアンケート(全戸調査)を実施し、その概要を明らかにした。アンケートの項目は、地区振と打ち合わせを重ね、それぞれの意見を擦り合わせながら作成した。 アンケートの具体的な項目は、地区への愛着や住みやすさ・定住意識(これらに関連して、地区内のお気に入りの場所・自慢できるところの自由記述)、地区内での支え合いの実態、移住者との関わりや期待、生活不安(家族介護、認知症、詐欺被害、災害、コロナ、家計等)、地区振の活動の認知度、10年後の集落の姿についての不安や期待に関する自由記述である。 その結果浮上した課題は、地区振の活動がほとんどの住民に浸透しているにも関わらず、身近な存在として認知されていないこと、一般住民と移住者との間に関わりが少ないこと、および、ほとんどの住民が地区の将来を悲観している点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度、2021年度の2年間、コロナ禍の影響でフィールド調査がほとんどできなかったため(鳥取県は独自の蔓延防止や緊急事態宣言の基準が厳しく、訪問調査が可能となったのは2021年12月であった)。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に実施したアンケート結果をより詳細に分析し、その結果をボランティア組織と共有した後、一般住民へのフィードバックを実施する予定である。一般住民には、分析結果の概要を簡潔な冊子にまとめ、高齢者にもわかりやすい資料として配布する。 また、アンケートの分析で得られた結果のうち、一般住民が地区振およびその活動を認知しているにも関わらず、親近感を感じていない点に着目し、その要因や今後の課題について、一般住民や移住者へのインタビュー調査によって明らかにする。さらに、アンケートの回答者が高齢者に偏っていた点(平均年齢・中央値とも72歳)を鑑み、同様の調査を若い世代にも実施し、その結果を比較検討する。とりわけ、若い世代や移住者による地区の将来像についての意見を収集する予定である。 最後に、人口減少や高齢化の歯止めがかからない地区の存続を左右する移住者の安定的確保と定着のための方途について、地区振および行政と共同で取りまとめる。具体的には、①移住者の生活満足度や適応状況、②地域住民の移住者をめぐる意識を明らかにした上で、移住者と一般住民をつなぐ地区振とともに現状分析を行い、その課題や移住者に対して今後必要となる支援についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、調査旅費が不要であったため。 2022年度は、調査旅費および研究分担者との打ち合わせ旅費、研究分担者への分担金、アンケート用紙報告書印刷費等として使用する計画である。
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