研究課題/領域番号 |
19K02164
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
武田 真理子 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80337245)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニュージーランド社会保障・社会福祉 / コーディネーター / コーディネーション / ウェルビーイング予算 / 児童福祉省 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会福祉分野における「コーディネーター」とその「コーディネーション」の機能に関する理論化の第一歩として、日本の既存制度に基づく「コーディネーター」の役割の実態等に関する分析と、日本の社会保障・社会福祉が目指している官民協働による生活困窮者等の自立支援及び福祉サービスの提供を実現しているニュージーランドの社会保障制度におけるコーディネーション機能の分析を行うことを目的としている。 研究期間の初年度である2019年度は、1)現政権下のニュージーランドにおける社会保障・社会福祉の方針と制度改正の内容等の情報収集と分析、2)日本国内の社会福祉分野における「コーディネーション」に関する定義等に関する調査と分析、3)ニュージーランドへの訪問調査による社会開発省等への近年の政策動向及び「コーディネーション」業務の現状に関するヒアリング調査、4)一年間の研究成果のまとめと次年度の「コーディネーション」機能の分析のための調査項目の設計や調査対象者への事前確認等を行うことを計画し、全て着手をすることができた。 具体的には、1)は2019年度からの「ウェルビーイング予算」の成立と社会保障制度改革の内容、児童福祉省設立と子ども中心の新しい政策展開の内容に関する分析結果を日本ニュージーランド学会第26回研究大会(2019年6月)の口頭発表、『日本ニュージーランド学会誌』第26巻(2019年7月刊行)への論文発表、日本弁護士連合会貧困問題対策本部勉強会(2020年6月)の講演等において行った。2)は年度末の新型コロナウィルス感染症拡大の影響により国内のヒアリング調査を実施できなかったものの、先行研究のレビューを行い、国内の「コーディネーター」の定義等の分析を進めた。3)は2019年9月に実施し、関係機関へのヒアリング調査を進めると同時に、4)の次年度調査に向けた対象機関との調整を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要の通り、2019年度の研究実施計画の4つの内容の全てに着手をすることができたため、おおむね順調に進展していると評価する。但し、2)の日本国内の社会福祉分野における「コーディネーション」に関する定義等に関する調査と分析については、当初計画をしていた日本ボランティアコーディネーター協会、社会福祉分野において「コーディネーション」の理論構築に先行的に取り組んでいる龍谷大学の筒井のり子教授、全国社会福祉協議会等へのヒアリング調査を実施できなかったため、2020年度の新型コロナウィルス感染症の収束時期に再度、実施を検討するとともに、オンラインによる調査協力について依頼を行うことで達成を目指す。 また、2019年度の研究成果のまとめについては、1)については研究実績の概要で示した通り一定程度行えたが、2)と3)の日本及びニュージーランドの社会保障・社会福祉分野における「コーディネーション」機能の分析の結果については現在、論文を執筆中の状況である。尚、本研究を進めるにあたり、ニュージーランドにおける新型コロナウィルス感染症への対策と社会保障制度の関係性について分析・整理を行い、論文「ニュージーランドにおけるCOVID-19対策と社会保障制度に関する考察」を『東北公益文科大学総合研究論集』第38号(2020年度中に刊行予定)に掲載予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の2年目となる2020年度は、1)前年度までの調査結果をまとめた論文の投稿及び学会報告を行う、2)ニュージーランド社会保障・社会福祉制度におけるコーディネーション機能の実態を把握するために社会開発省所管の「コミュニティ・リンク」等の機関を訪問し、行政職員、民間団体・組織職員、利用者へのヒアリング調査を行う、3)上記調査結果を整理、分析し、関係機関への電子メールによる追跡調査及び確認作業を行いながら論文執筆に取り組むことを計画している。 ニュージーランドはいち早くロックダウン等の積極的な政府対応を行った結果、2020年6月現在、新型コロナウィルス感染症が完全に終息した段階にあるが、日本における終息の見込みがないため、ニュージーランドへの訪問調査を実施することが困難であることが予想される。このため、ニュージーランドの関係機関へはオンラインによるヒアリング調査への協力依頼を進め、できるだけ計画通りに研究を遂行できるように検討を進める。但し、オンラインによるヒアリング調査では利用者調査の実施が困難であることが予測される等の限界があるため、ニュージーランドへの入国許可が行われる時期があれば、本務校との慎重な協議の上、本研究の業務を優先し、訪問調査を実施るすことを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ニュージーランドへの訪問調査の旅費が当初の計画よりも高くなる一方で、新型コロナウィルス感染症拡大により国内におけるヒアリング調査が実施できなかったため、結果的に、旅費の支出額が予算よりも低くなり、2,483円の残額が生じた。同今年度残額は次年度のヒアリング調査の旅費として使用する。
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