本研究プロジェクトの最終年度である2021年度においは、前年度に行った量的調査を補完する質的調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う、訪問でのインタビュー調査の実施が厳しい状況となったことから、郵送による追加調査として全国の社会福祉法人のうち、社会福祉協議会・社会福祉事業団等を除く3000の施設経営法人をに対して郵送自記式調査(web入力方式)にて調査を実施した。 分析結果の詳細は成果報告書に譲るが、2カ年にわたって行った1次・2次の量的調査により、社会福祉法人の経営指向性に係る因子について、①福祉制度対応、②合併・グループ化指向、③経営効率性、④ソーシャルワーク機能、⑤施設経営注力が抽出された。各々の因子をスコア化し、高齢・障害・児童・その他の事業区分、措置費支弁施設の有無、指定管理業務の有無、事業収益規模、設立年度、事業継承の方向性等による違いについて分散分析を行った。 本研究により、戦後長きにわたり我が国の社会福祉制度の中核として位置づけられてきた社会福祉法人について、その形態的の様相が論じられるが、各々の事業分野において置かれている経営環境や地方公共団体との関連性の中で、異なる指向性を同時に内在させるハイブリッドな様相が見られたことに本研究の意義を見出すことができよう。 今後に向けては、サンプル数を増やした量的調査を継続するとともに、各々の社会福祉法人の経営指向性を導く理事長や理事会の意思決定が大きいことに鑑み、理事長や理事会といった経営層の役割を含むリーダーシップのあり方について検討していきたい。さらに、急速に人口が減少する地方の町村と大都市圏の社会福祉法人が地域共生社会実現の中で果たす役割について検討を重ねていきたい。
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