ドメスティック・バイオレンス(以下、DV)の被害者とは、一般的に配偶者などからの暴力による被害者を指す。ただし、児童虐待とも密接に関係しており、日本人男性と外国人女性との国際結婚による子どもなど、多様な文化的背景を持つ親子においても被害が急増している。このようなケースへの支援においては、多文化ソーシャルワークの有効性が指摘されているものの、その具体的な支援方法は未だ確立しているとは言い難い状況である。 そこで、2019年度から2021年にかけて、以下の2点を目的として研究を行った。第1に、外国人女性とその子どもたちのDV被害の実態と、現状の支援の問題点を明らかにすること、第2に、多様な文化的背景に配慮するソーシャルワークである多文化ソーシャルワークを活用し、臨床レベルの支援に地域ネットワークや国際連携による支援を統合した包括的なサポート・システムモデルを開発することである。 まず2019年度は、外国人女性とその子どもたちのDV被害や支援に関する先行研究について把握し、理論的検討を深めた。また、これまでの研究において実施してきた母子生活支援施設での調査を継続し、外国人DV被害者への支援における現状の考察や、それらの課題について検討した。次に2020年度は、母子生活支援施設で実施した調査結果の分析を通して、特に問題が長期化・深刻化しやすい傾向がある外国人女性やその子どもたちのDV被害に関する理論的な考察を深めた。2021年度は、地域ネットワークによる協働体制と、支援機関の国際ネットワークによる連携体制を統合したサポート・システムモデルの検討を行った。
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