研究課題/領域番号 |
19K02172
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
中嶌 洋 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (00531857)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 家庭養護婦派遣事業 / ホームヘルプ事業 / 竹内吉正 / Kさん / 第1回老人福祉文献賞 / 長野県社会福祉協議会 / 中村登代子 / 岡山孤児院 |
研究実績の概要 |
1956年4月から始まった家庭養護婦派遣事業(長野県上田市)の実質的推進役とされた竹内吉正氏(上田市社協初代事務局長)の青春期(1941-1942年)に着目しつつ、彼直筆の日記を紐解きながら、家庭的影響、時代背景、戦争などの彼の思想形成に寄与したと思われる背景要因の解明に努めた(『中京大学現代社会学部紀要』14(1)~14(2))。さらに、復員後の闘病生活(『中京大学現代社会学部紀要』14(2))、県社協勤務時代の職務内容・役割(『社會科學研究』 41(2) )、民間人(長野県ホームヘルパー協会元副会長、中村登代子ら)との連携(『社會科學研究』 41(1) )、第1回老人福祉文献賞受賞の影響(『社会学論集』 (20) )、Kモデル説の年代別検討(『地域ケアリング』 22(14) ;『東北社会福祉史研究』 (39))などを行い、竹内というキーパーソンの視点から見た長野県のホームヘルプ事業史の一端をかなり解明できた。 加えて、長野県上田市以外の早発地域である千葉県小糸町、香川県国分寺町、山口県南陽町などにおけるホームヘルプ事業の展開過程も詳らかにした(『地域ケアリング』 22(8) ;『中京大学現代社会学部紀要』 14(1))。 その他、菊池義昭氏との共同研究で、1901-1902年の岡山孤児院の賛助員の全国的な支援ネットワークシステムについても実証的にアプローチし、実態解明に努めた(『社會科學研究』 41(2) )。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本初の組織的なホームヘルプ事業である「家庭養護婦派遣事業」の歴史研究では、上田市社協に所蔵されていた「家庭養護婦関連資料」(全11種類)や竹内吉正日記などを紐解くことで、かなりの進展が期待される。こうした担い手側の当事者の視点や運営側の当事者の視点からの歴史研究は、一つの事業・制度を推進する上での困難・課題をどう乗り越えようとしたのか、全国展開(制度・制作化)に向けてどのように調整・連携しながら展開していったのかを探究する糸口になると考える。今後、社会福祉学・社会事業史という視点から検討しつつも、少しずつ、社会政策・社会学の視点からも捉えるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
すでに収集している第一次資料(家庭養護婦派遣事業関連資料、竹内吉正日記、長野県ホームヘルパー協会50年史、上田市社会福祉協議会50年史など)を主に活用しながらも、地方の先例と国の政策の結節点・相違点・共通点を探究するべく、社協等の民間組織の広報紙、地元新聞記事、地方議会の議事録、国会議事録などを収集分析する。また、政策決定の裏側を探究するべく、ホームヘルプ事業史の関係者にも聞き取り調査を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍で、現地に赴いてのフィールドワークの実施に影響が出たため差額が出た。この部分については、新型コロナが明けた折には、安全・安心を第一に、フィールドワーク・資料収集などの際の費用に補填したい。
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