研究課題/領域番号 |
19K02174
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
井上 寿美 大阪大谷大学, 教育学部, 准教授 (40412126)
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研究分担者 |
笹倉 千佳弘 滋賀短期大学, その他部局等, 教授 (60455045)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対等なつながり / ファシリテーション役割 / トランスレータ役割 / アサーション役割 |
研究実績の概要 |
里親委託児の権利擁護のために、里親養育の不調回避に資する、里親によるレスパイト・ケア(以下、レスパイト)の利用促進は不可欠である。そこで里親支援専門相談員(以下、里専)が、里親とどのような関係を築き、いかなる役割を担うことにより、里親のレスパイト利用が促進されるのかについて明らかにした。 里親のレスパイト利用を促進する里専と里親の関係は次のとおりである。里専も里親も、社会的養護児童の養育をおこなうという同じ活動目的をもち(里専と里親の活動目的共有)、養育に関してお互いに学びあい(里専と里親の学びあい)、お互いの悩みを共有し(里専と里親の悩みの共有)、それぞれの立場において果たすべき各々の役割を担う(里専と里親の協働)ことをとおして、両者の間に社会的養護にかかわる者として対等な協力関係が築かれる(里専と里親の対等なつながり)ことである。 里親のレスパイト利用を促進する里専の役割は次のとおりである。里専が、里親どうしがつながりやすくなるように、里親どうしの問題解決や合意形成や相互理解をサポートし里親の協働を促進する「ファシリテーション役割」、里親と児相職員がつながりやすくなるように、里親の思いを意味や内容を変えずに児相職員が受け入れやすいように伝える「トランスレータ役割」、里親と児相職員と子どもがつながりやすくなるように、里親からの情報を子どもの立場から児相職員に伝えることにより里親と児相職員双方の立場を尊重する「アサーション役割」を果たすことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
covid-19感染予防のため、2020年になってから里親サロン等の開催が中止されている。また里親支援専門相談員による啓発や訪問活動等も自粛せざるを得ない状況が続いている。2020年になってからの調査がほぼ実施できない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
covid-19による外出自粛や経済状態の悪化などにより、DVや家庭内における虐待の増加・悪化が懸念されている。2016年に出された社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会被措置児童等虐待事例の分析に関するワーキンググループの報告によれば、児童養護施設よりも里親家庭における虐待発生の割合が高い。このような状況を鑑みれば、これまで以上に里親委託児権利擁護のための里親養育支援は、喫緊の課題であるといえる。 しかしcovid-19感染予防のため、調査対象地において2020年になってから里親サロンの開催等が中止され、里親支援専門相談員による啓発や訪問活動等も自粛せざるを得ない状況が続いている。幸い調査対象地は感染者数0であり、いち早く平常の暮らしが戻りつつあるが、都道府県をまたぐ移動が可能にならない限り、たとえ当該県で里親支援が再開されても調査が実施できない状況が続くことも予想される。 そこで今年度はまず、すでに収集済みの里親のインタビュー資料から、里親によって明確に意味づけされることなく語られた委託児との「かかわりあい」のエピソードを抽出し、里親と委託児の「かかわりあい」のアクチュアリティについて分析をおこなう。語りは、調査協力者と調査者との相互行為において共同生成されるものであり、なおかつ里親がこのように自発的に調査者に伝えようとするエピソードには、里親と委託児との「かかわりあい」をめぐるアクチュアリティが表現されているに違いない。従来の研究ではあまり注目されてこなかった、里親と委託児の「かかわりあい」のアクチュアリティを明らかにすることにより、里親支援専門相談員の里親訪問マニュアルにおける、里親と委託児の関係という視点からとらえた支援のポイントを導きだしたい。 また、オンラインでのやりとりを通じて、里親委託児の権利擁護につながるような里親養育パンフの作成に着手したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
里親サロンのフィールドワークを継続的に実施する予定であったが、2020年1月以降、covid-19感染予防のため、サロン開催が中止となりフィールドワークが実施できなかった。2020年度上半期も同様の状況が続くと予想されるが、再開すれば、covid-19による感染予防のもとでの里親養育、里親支援などの新たな課題ととりくみに関する調査を実施したい。
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