研究課題/領域番号 |
19K02174
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
井上 寿美 大阪大谷大学, 教育学部, 教授 (40412126)
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研究分担者 |
笹倉 千佳弘 滋賀短期大学, その他部局等, 教授 (60455045)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コロナ禍 / 感染症対策 / 無条件の顧慮 / パートナーシップの構築 / ネットワークの形成 |
研究実績の概要 |
A県を事例とした研究実績は以下の4点である。 1.コロナ禍における里親支援専門相談員(以下、里専)の活動:里専にアンケートを実施した(回収率100%)。2020年春の緊急事態宣言発令中は、電話相談や養育リスクの高い里親家庭を選んで実施された訪問を除き、その他の活動(たとえば広報・啓発活動、里親研修など)は中止となった。宣言解除後の活動は次のような状況であった。広報・啓発活動の一環としてのパネル展などについては、来場者の2週間前からの検温や入場前の検温、展示物のラミネート加工、予約制などの感染症対策を講じた上で、早いところでは6月から再開された。一時里親・週末里親などの委託推進についても同じ時期に再開された。一方、これらの活動をほとんど再開できない里専もいる。コロナ禍の活動については、里専の所属施設の感染症対策の方針が大きく影響していることがわかった。 2.コロナ禍における里親養育:里親にアンケートを実施した(回収率41%)。緊急事態宣言下の外出制限が里親・同居家族と委託児の関係に与えた影響について質問した。2021年3月末回収締切りであったため、分析は2021年度となる。 3.委託児の育ちを支えるための支援:里専および里親にアンケートを実施した(回収率同上)。委託児の居場所、委託児専用の電話やメール相談、委託児が利用できる中立的な権利擁護機関の必要性と理由について質問した。里専については、これらの支援が「なくてもよい」「どちらかといえばなくてもよい」という回答はなかった。里親についての分析は2021年度となる。 4.里親と受託児の「かかわりあい」のアクチュアリティ:里親の聞き取り資料の分析を行った。里親の受託児への基本的なかかわり姿勢は無条件の顧慮、調整的なかかわり姿勢はパートナーシップの構築、里親養育のめざす方向は受託児の育ちを支えるネットワークの形成であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、緊急事態宣言などの発令により、里親サロンなどの開催が中止され、里親支援専門相談員の活動も自粛された。宣言解除後は、少しずつ活動が再開されたが、府県をまたぐ移動ができないため、調査地に赴いてフィールドワークを実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も新型コロナウイルスによる影響が懸念される。調査対象地であるA県は比較的感染者が少なく、里親支援専門相談員(以下、里専)の活動も少しずつ再開されている。しかしワクチン接種が進まない限り、府県をまたいでA県へ調査に赴くことは困難であると考えられる。今年度もフィールドワークを実施することは期待できない。 そのため今年度は、2021年3月に実施した、里専の活動に関するアンケート調査の分析を引き続き行うとともに、里親養育に関するアンケート調査の分析を行う予定である。これらの調査を分析した結果については、学会発表、論文執筆、報告書作成、オンラインなどでの報告会開催を予定している。 また、里親養育アンケートの自由記述欄の分析をとおして、里親養育に関する悩みや困りごとを抽出し、それに答える形で、Q&A形式の里親向けの冊子づくり、委託児の権利擁護につながるQ&A形式の委託児向けの冊子づくりを予定している。これらの冊子づくりについては、里専とのオンライン学習会を開催し、協働でおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
里親会の活動、委託児支援の活動のフィールドワークや、里親や里親支援専門相談員へのインタビューを予定していたが、往来そのものができなかったため、経常していた旅費を使用する機会がなかったため。 オンラインを通じて研究会を実施し、研究会発信の成果物を作成する予定である。
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