研究課題/領域番号 |
19K02182
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
伊丹 謙太郎 法政大学, 公共政策研究科, 教授 (30513098)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協同組合間協同 / 非営利組織連携 / 社会的連帯経済 / 賀川豊彦 |
研究実績の概要 |
本研究は、協同組合を中心とする非営利組織が事業パートナーシップを通じて課題解決を図ってきた歴史を軸に、今日のSDGs推進などに代表される、非営利 セクターと行政・企業等との連携のあり方を模索するものである。2021年度は、前年度に引き続きCOVID-19の影響の下で海外および国内の地域間移動が制約されたことで当初計画からは大きく変更を余儀なくされた。一方で、オンラインによる研究交流が国際的にも定着をみたことで、海外研究者とのコンタクトや情報共有などをはじめ、想定外に前進をみたものもある。 当初から本研究と平行して推進されてきた日本協同組合連携機構(JCA)による協同組合連携の共同研究は、2018年より3年間であった研究期間が(COVID-19の影響もあり)半年ほど延長された上で、本年度終了し、研究成果として書籍『これからの協同組合間研究』を2021年10月に刊行した。このうち、2章・6章を担当し、2章については、戦前の非営利組織および社会運動の連携を中心テーマとし、6章はこうした連携の現代的可能性について検討する内容となっている。また、2019年よりスタートした千葉県域での非営利組織連携の取組であるつながる経済フォーラムちばについても、11月に第3回フォーラムを開催し、実践者と協働するアクション・リサーチとしての本研究の特色も強化されてきている。 この研究のスタート以後、サブテーマのひとつとして大きくなってきているのが、社会的連帯経済(SSE)についての調査研究である。本年度は、国際労働機関(ILO)駐日事務所の依頼で日本におけるSSEの実情と事例収集を行った。12月に調査概要の報告と調査事例団体によるシンポジウムを開催、1月には日本語および英語版の調査報告書を刊行している。こうした取組を通して、これまで以上に国内外の研究者とのつながり・連携の強化をみている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画は2018年に作成し、2019年度4月より開始したものである。この間に大きな変化が2つあった。ひとつは、COVID-19の影響である。これは多くの研究者、特に海外調査を計画に含む研究者にとっては大きな計画変更を迫るものであった。もうひとつは、所属研究機関の移動であり、これは他の研究者に比して例外的な変化である。両者ともに2020年4月と時期が重なったこともあり、計画推進に大きなブレーキがかかることになった。機関移動は折り込み済であったが、各機関とも例外措置の実施が続くとともに、そもそも出勤できないため、機関の諸手続きがどう行われるのかがまったく見えない状態が続いた。2020年秋以降は持ち直し、本実施状況報告書の主となる2021年度は計画を修正しながら、研究自体はかなり前進できたと考えている。 現在までの具体的進捗としては、概要でも言及したように並行する国内事例の共同研究(日本協同組合連携機構JCA)が3年間の研究期間を終え、まとまった成果を書籍『いのち・地域を未来につなぐ これからの協同組合連携』として刊行することができている。また、アクション・リサーチとして2018年より進めている千葉地域での取組についてもプラットフォームがオンラインへと移行したが、順調に議論や企画が進んでいる状態であり、第3回フォーラムも56名の参加者を得た。 ほかに2021年度は、新たに本研究課題のサブテーマとして社会的連帯経済(Social and Solidarity Economy, SSE)をキーワードとした調査に重点を置いている。SSEは、協同組合やNPOをはじめとする市民社会組織が国内外で広く連携して人間中心の経済への変革を求める運動であり、まさに本研究課題の現代的形態を象徴するものと言える。SSE研究領域に合流することで国内外の研究潮流に沿った新たな展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2020・2021年度の2年間にわたりCOVID-19の影響で大幅な研究計画修正が行われた。特に、海外調査研究がオンラインに移行された点については、国際的なオンライン移行もあり頻度の高い交流が実現でき、性格は異なりながらも研究交流自体の推進は上手くいきつつある。おおよそ月1回ほど国際的研究集会に参加、うち年に1回は報告者として日本の成果を海外に向けて示すことができている。ただし、1週間フルで滞在するような実地調査とは大きく違い、現場や原資料へのアクセスが困難であるなど変更後の計画では代替できないものもある。 最終年度となる2022年度に当初計画のレベル感をなるべく取り戻すとともに、1年間の研究期間延長も視野に置きながら、十分な成果を得られる研究として完遂することを心がけている。現時点では海外はオンラインに代替しながらも、国内調査については遅ればせながらこれから計画内容を実施していく方向で考えている。 海外調査の代替としては、インプットよりも海外と共同開催のオンライン研究会などを組織することでアウトプット中心の計画へと変更し、2022年度は東アジア三カ国・地域での非営利組織連携についてのシンポジウム開催を目標としている。 国内調査は、すでに2022年度春より非営利組織連携の視座から社会的連帯経済(SSE)の国際ネットワーク組織を考える連続講座を企画し、登壇者等との情報共有を図る試みを進めている。その他、夏以降に関西・中京圏を中心に現地調査をスタートさせ、日本における非営利組織の現状を確認するとともに、史資料を通した戦前から現代に至るまでの組織間連携の変容についてモデル化できるような試みを進めていく。これらを通して、遅れを取り戻しながら、当該分野において有益な成果を出せるよう引き続き研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた海外および国内調査がCOVID-19により未実施のため、これらの諸経費について執行に至っていない。今回の計画変更はかなり大幅なものにあたるため、1年間の研究期間の延長を申請する予定であり、2022・23年度の2年間で当初計画以上の成果をあげられるよう使用額の調整を図っている。今年度は現時点では国内の移動については明るい見通しがあるため、上半期から国内調査を中心に研究費を支出し、同時にこれまでオンライン開催であった研究会等を会場を確保しつつ対面型で実施することで計画的な支出を進める予定である。ただし、当初計画にある調査にともなう海外渡航については2022年4月の現時点ではいまだ不透明な状態である。 現行計画では、2022年度秋に南ヨーロッパ地域に調査と研究交流を目的とした渡航を予定している。秋季の海外渡航が困難となった場合、代替的に国際研究集会をオンラインで主催するとともに、当該集会に必要となる同時通訳経費等に支出することで当初計画と比しても十分な成果と判断できる研究遂行となるよう、情勢を見ながら複数プランを計画している。
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