研究課題/領域番号 |
19K02185
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中西 真理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任講師 (50724118)
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研究分担者 |
永谷 文代 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任助教(常勤) (50773206)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発達障害 / 早期診断 / 心理社会的影響 |
研究実績の概要 |
発達障害の早期発見と早期集中療育は欧米を中心に広がりをみせ、有効性のエビデンスが認められている。早期集中療育のリソースが乏しい日本の現状においても、早期診断・早期介入は養育者のエンパワーメントを実現し、療育参加や関わりの変容によって発達に良い影響を及ぼすと考えられるが、エビデンスは不足しており、支援の現場では3歳未満での診断に対して否定的な見方もある。大阪大学・堺市と民間企業の三者が協力した子育て支援施設、キッズサポートセンターさかいでは、未就学児を対象に小児発達専門心理職による相談と医師の診察を実施している。開業してから平成29年度末までの5年間に300件余りの専門心理相談を行い、約半数が医師の診察を受け、その約7割を発達障害の暫定診断で専門医療機関に紹介しており、既存の保健センター等による健診・フォローのシステムでは対応が追いついていなかった発達相談の受け皿となっている。このシステムで早期診断に結び付いた症例の就学までの経過を調べ、児の発達経過と養育者の認識や行動変容、早期の医療介入が親子に与える影響を明らかにすることが、本研究の目的である。 令和1年度はまず研究計画書・同意書・リクルートに用いる文書等を作成し、質問紙の作成・購入・使用許諾等の手続きを行った。これらの書類は大阪大学人間科学部研究倫理委員会に提出・審議を受け、研究開始の承認を得た。これを受けて研究に必要な物品を購入し、研究に使う部屋の確保、協力者のスケジュール調整を行った。 当該年度は10組の対象者が特定され、予定通りR1年度末に研究案内の送付と電話によるリクルートを行った。令和2年度初頭に面談を実施すべく6組の研究参加予定者を獲得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度は研究説明文書・同意書・リクルートに用いる手紙を作成した。また質問紙等の作成・購入・使用許諾の手続き等を行った。これらの書類は大阪大学人間科学部研究倫理委員会に提出・審議を受け、研究開始の承認を得た。これを受けて研究に必要な物品を購入し、研究に使う部屋の確保、協力者のスケジュール調整を行った。 初年度は10組の対象者が特定され、予定通り年度末に研究案内の送付と電話によるリクルートを行った。令和2年度初頭に面談を実施すべく6組の研究参加予定者を獲得した。 うち一組は参加者の都合により3月中に面談を行った。研究説明書に基づいて同意を取得したのち、児の発達検査を実施、養育者面談では質問紙の記入とオーディオレコーダーを使用した半構造化面接を行った。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度末より研究参加予定者として5名の養育者と連絡を取り合っている。令和2年度初頭に予定していた養育者面談はCOVID-19感染症対策に伴う緊急事態宣言によって延期となっており、6月以降に実施する予定になっている。データ取得は夏までに終了し、令和2年度後半はデータの整理・分析、年明けには令和3年度の研究対象者に案内を送付予定である。 データ分析では、参加児の診断名、発達指数、自閉特性の有無と重症度、センター利用後の医療と療育/支援機関の利用履歴、就学準備状況などを明らかにする。養育者への早期診断・介入の心理的影響は質問紙を用いて定量的に示し、スコアに影響を与える因子(児の特性や家庭の特徴、医療機関や療育/支援機関の利用状況など)を検討する。児の発達指数の変遷とそれに関連する因子についても検討する。半構造化面接の自由回答項目からは、発達障害の早期診断がもたらす養育者の気持ちの変化・障害理解・行動の変容・児との関係性の変容などについての検討を行う。 これらをもとにセンターで早期発見後明らかとなった児の診断と発達特性、療育・支援の利用状況を明らかにするとともに、児の発達指数の推移、適応状況、養育者の心理的変化、行動の変容、エンパワーメントとそれに関連する因子を検討する。これらをまとめ3歳未満における発達障害早期発見・早期診断に自治体として取り組む意義について考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品についてはすでに研究代表者が所有しているものを流用したり、施設にあるものの使用許可がいただけたため、新たに購入するものが少なくて住んだ。また、当初の計画では、対象は就学前年度の児で年間を通してのリクルートおよびデータ取得を行う予定であったが、小学校へのトランジションの進行状況に参加児間でできるだけ差が生じないよう、年度末の1-3月をリクルートの時期とし、翌年度初めの4-7月をデータ取得の時期と規定した。そのため研究参加者との面談の時期が翌年度に繰り越され、謝金の支払いも持ち越しになった。
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