研究課題/領域番号 |
19K02187
|
研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
小熊 仁 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (00634312)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ボランティア交通 / ソーシャルキャピタル / 支払い労働意思量 / 負の二項回帰モデル / マルチレベルモデル / 持続性 / 効率性 |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き、DEA(Data Envelopment Analysis:包絡分析法)に基づき各団体の効率性を定量的に評価した。分析の結果、ボランティア交通の効率性をめぐっては、各団体の収入規模や収益性に関わらず格差が生じており、事業全体として規模を拡大し、規模の適正化を目指すことが効率性の改善に結びつくことが明らかになった。さらに、団体の収益性や経営資源の蓄積の程度は効率性に関連せず、収益性や経営資源が比較的劣る団体であっても効率的なサービスを展開していることがわかった。 ボランティア交通はボランティア従事者の参加意向に大きく依存している。しかし、ボランティア従事者の参加はボランティアとして奉仕する団体が安定した組織基盤を維持し、希少な経営資源を効率的に活用していることによりはじめて可能になるものである。従って、前年度に行った収入構造分析と合わせ、ボランティア交通の提供にあたっての基礎的条件を明らかにすることはアンケート調査を行う前の足がかりとして極めて重要である。 なお、地域住民およびボランティア従事者に対するアンケート調査は、Covid-19の影響により延期となっていたが、今年度後半になり前者に関しては市とボランティア団体との調整がつき、既にアンケート対象者のサンプルも収集できたため、アンケートの早期実現に向けて活動をすすめていく。一方、後者に関してはサンプル数確保の観点から、分析対象地域を広げる必要があるが、昨今の社会情勢のため依然として実施の目途が立っていない。このことから、今後は研究期間の延長等も視野に入れ対応策を検討していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は前年度に引き続き、ボランティア交通にかかる活動の詳細や運用面の特徴を明らかにするため、とくに効率性の面に焦点をあて、ボランティア交通が効率性を確保するための条件について明らかにすることができた。 なお、アンケート調査に関してはCovid-19の影響により延期となっていたが、市およびボランティア団体と調整がつき、アンケート対象者のサンプルも収集することができた。研究課題の早期実施に向けて活動をすすめていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、ボランティア交通の運行において最も欠かせないボランティア従事者の参加意識とソーシャルキャピタルとの関係について、様々な心理的要素の存在を考慮し分析を行うことが目標である。今年度は高崎市倉渕町の住民を対象にボランティアに対する支払い労働意思量とソーシャルキャピタルとの関係の有無について、負の二項回帰モデルを用い分析を試みる。また、居住地区のソーシャルキャピタル蓄積の程度と支払い労働意思量との関係を明らかにするため、マルチレベルモデルを用いて定量的に考察する。 なお、ボランティア従事者の支払い労働意思量とソーシャルキャピタルとの関係に関する分析については、サンプル数確保の観点から分析対象を広げる必要がある。しかしCovid-19の影響によりアンケートの見通しが立つか否か依然として不透明なため、この場合は研究期間の延長等も視野に入れ対応策を検討していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、群馬県高崎市倉渕地域のボランティア交通を対象に地区別、団体別および個人属性別の参加意識とソーシャルキャピタルの関係を分析する予定であった。しかし、先にも述べたように、前年度に引き続きCovid-19の影響によってアンケートの延期が続き、ようやく年度末に実施の見込みが立ったため残額が生じる結果となった。しかし今年度はアンケートの見通しが立ったため、研究課題の早期再開に向けて準備をすすめていくほか、残る残額分の執行に関しては研究課題の繰り越しも視野に入れながら検討をすすめていきたい。
|