研究課題/領域番号 |
19K02188
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
山田 勝美 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (70290640)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子ども / 虐待 / 家族理解 / かけがえのなさ / 覚悟 |
研究実績の概要 |
現段階では、施設職員への調査がほぼ終了している。これに加え、先行研究などの整理も並行して行っている。 まずは、研究の背景として、児童養護施設の入所児童の入所理由の質的変化が、1970年代から起こり、当時は、「死亡」という子どもにとって理解しやすいものであったものが、1980年代、特に90年代以降、虐待を主な入所理由とする状況となっていることを整理した。そのうえで、こうした状況の変化により、子どもが施設入所の理由を理解するうえで一定の困難が生じていることが類推されるとした。 次に、先行研究の整理であるが、1975年から子どもの家族理解の必要性は取り上げられており、特に真実告知およびライフストーリーワークといったアイデンティティ保障という観点からのアプローチは整えられてきているものの、子どもの家族理解、つまり、家族とはどういうものか、また家族と暮らせない自分をいかに整理するかという点で課題が残っていること、そして、施設を利用した当事者の視点から家族を理解するための支援のあり方が十分に検討されていないことが課題であると考え、現在整理中である。 施設職員への調査については、入所から退所にかけて一連の支援過程のなかで、いかにして子どもの家族理解を支援しているのか、その把握を行った。家族理解という支援を図るためには、施設入所時の関りから関係形成を図り、特に、施設入所後、子ども自身が自らを「かけがえのない存在」としてとらえられるような日々の営みができることにより、家族理解そのものを共有できる関係ができることをまずは明らかにした。そのうえで、子どもの存在している意味をなす家に帰れない理由を含んだ事実を共に共有するなかで職員が覚悟をもって臨むこと自体が、家族理解を促進させる重要な因子になっていることも明確化されてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行文献の収集とその解題を通して、研究課題の整理がある程度終了していること、および職員調査においても、家族理解の前提になる条件と家族理解を促進させる因子が明確化していることが、その理由としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の最大の課題は、利用者調査である。ただし、この新型コロナの状況下にあって、協力がどこまで得られるかである。 職員調査にご協力いただいた施設側に協力を求め、適宜行っていきたい。まずは、利用者調査における倫理審査を行いたい。そのうえで、実査に入りたいと考えている。 なお、利用者調査は、施設を退所した人10名程度および虐待をした親、つまり保護者への調査である。この結果をまとめ、職員調査との比較検討および分析を行い、次年度の総合考察へと展開していきたい。これに加え、職員調査もすべて本年度中に完了させたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、前年度夏期に体調を崩し、その結果として施設職員調査を予定していたところよりも少なく終わってしまったことがある。本年度は、残された施設調査も完了させていきたいと考えている。
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