研究課題/領域番号 |
19K02188
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
山田 勝美 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (70290640)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 施設入所児童 / 家族の現実 / 理解と支援 / 逡巡 / 施設生活の満足感 |
研究実績の概要 |
前年度実績報告で示したように、職員調査によって家族理解に向けた支援過程を可視化することはできている。また、当事者調査の1回目を終え、さらに2回目を実施していくなかで、より深い家族との葛藤について聴き取りができてきている。特に、親の虐待行為の背景を構造化して伝えることに加え、自分自身が親となり、子どもを育てていくなかで、自らの虐待体験の記憶の再現があること、そこに至るまでに自らの親の思いを語ることができているがゆえに、支援を求めることができていることがみえてきている。 また、家族理解においては、被虐待体験にだけ焦点をあてるのではなく、いまだ根付く存在すると考えられる血縁家族を定型家族とする社会にあって、施設で育つことの差異化を感じつつ、その葛藤への支援も改めて重要であることも当事者の声から確認されてきている。 この結果を職員調査との比較検討も実施し始めている。施設入所前後における支援内容、施設入所後の支援内容、事実告知とその後の支援、その後、つながり続ける支援といった流れで分析を行っている。入所前後の支援にあっては、誤認識の修正だけではなく、施設生活に落ち着きを見せた段階での説明、施設入所後の支援にあっては、子どもは、家族交流のなかで家族の現実とすでに向き合っているということ等、興味深い点が明確になってきている。さらに、当事者の声をライフヒストリー分析を通し、今後さらに検討を行い、家族理解とは何か、家族理解を支援していくための支援過程とその内容について精査していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、施設で生活を送った20名弱の当事者に2度の聴き取り調査を行っている。さらにいえば、自分自身の家族との経験を語ることを求めている。多くの退所者はトラウマを体験しており、オンラインではなく、対面での調査を実施したいと考えている。そうした意味合いから、新型コロナウィルス感染状況から当事者の方々が対面での調査を延期されるような事態もあった。そうした意味で若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染に対する懸念も薄らいだため、退所者への追加調査を完了するとともに、職員調査や退所者調査においてさらなる検討事項が出てきた際に、そのための聴き取り調査を実施する。並行して国内外の文献調査と関連させ、本研究をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析を行っていく際に必要となる文献、当事者調査等の3回目の調査を実施するため。
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