研究課題/領域番号 |
19K02198
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
小高 真美 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (60329886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自殺予防 / ソーシャルワーク / 総合的包括的支援 / 教育 / プログラム開発 |
研究実績の概要 |
本研究では、ソーシャルワーカーを目指す学生が、自殺の危機にあるクライエントの支援に求められる、実践的な知識と技術を身につけるための包括的な自殺予防教育プログラムの開発を目指している。2021年度は、これまでに開発した自殺予防教育プログラム(講義と演習)を、5つの大学のソーシャルワーカー養成課程の授業で実施して改善点を抽出後、プログラム内容や教授法を改訂した。プログラムの実施を担当した教員は、本研究代表者および研究協力者の計5名で、各授業科目の担当教員である。社会福祉士養成課程は、演習科目での実施が6授業、講義科目での実施が1授業、精神保健福祉士養成課程は、演習科目での実施が2授業、講義科目での実施が1授業であった。なお、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、全て対面で実施できた授業は2つの演習授業のみであった。当該授業に出席した学生は、2~4年生であり、一授業あたりの出席者は、演習科目では最小9名、講義科目では最大70名を超えた。実施時間数は、授業や学生の特性により1コマ(90分もしくは100分)から3コマまでと幅があった。プログラム実施後は、各担当教員からプログラム実施に関するフィードバックを文書と口頭の両方で得た。担当教員からは、「学生の自殺予防への関心は高く、このような教育ニーズは非常に高いと言える」とのフィードバックを得ている。特にプログラム内の演習では、学生がロールプレイの体験を通じて、自殺リスクのあるクライエントとの関わりに対する抵抗感や不安感が和らいだようであると、複数の担当教員からフィードバックがあった。一方、担当教員のフィードバックからは、講義と演習の時間配分や講義と演習の順番に関する課題も上がった。また、演習プログラムの内容の微修正も必要であることが分かった。これらのフィードバックを踏まえ、本自殺予防教育プログラムを改訂することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、本研究目的を達成するための重要なプロセスである包括的な自殺予防教育プログラムの試行的実施は、多くがZOOMによるオンライン双方向授業やZOOMと対面を組み合わせたハイブリッドの形態によるものであった。そのため対面授業による実施可能性は十分に吟味されていない。また、当初の研究計画では、実習指導における自殺予防に関する調査を実施する予定であったが、2つの理由により未着手である。一つ目は、新型コロナウィルス感染症感染拡大のため、調査対象となる予定であったソーシャルワークの実習現場に、調査による業務増大の負担をかけないように配慮したこと、臨地実習がオンラインによる学内代替実習に代わるなどの措置が講じられ、調査対象予定であった学生のリクルートが困難となったことが理由である。また以下の二つ目が特に大きな理由である。現在の日本の保健医療福祉の臨床現場では、自殺のポストベンション(事後対応)が十分に実施されているとは言い難いことが、2021年度に実施した先行研究のレビューにより明らかとなった。そのため、臨床現場や実習経験学生を対象とする調査から教育内容を検討するのではなく、テーマに精通する専門家への聴き取りや討議を通じて、これまでに開発・改訂してきた包括的な自殺予防教育プログラムに、実習中の自殺事例への遭遇も意識したポストベンションに関する内容を充実させる方が、より精度の高いプログラムが完成すると判断した。この点は2022年度の研究で着手する予定である。これらの理由により「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまで改訂を重ねてきた包括的な自殺予防教育プログラムに、ソーシャルワーク実習中の自殺事例への遭遇も意識したポストベンションに関する内容を盛り込み、プログラムの完成を目指す。また同プログラムの実施可能性および効果検証のための研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き2021年度も新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により、本研究で完成を目指す包括的な自殺予防教育プログラムを、全て対面による授業で実施することは困難な状況にあった。特に同プログラムの一部である演習は、オンラインよりも対面授業での実施の方が教育効果がより高いと考えられる。このような状況下において、次年度使用額が生じた。2022年度は多くの授業で対面実施の再開が予想されることから、プログラムの実施可能性と効果検証の研究を実施し、プログラム完成に向けて計画的に研究費を使用していく予定である。
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