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2019 年度 実施状況報告書

フィリピンにおける生活困難層の子どもへのケアサポートに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K02203
研究機関羽衣国際大学

研究代表者

渋谷 光美  羽衣国際大学, 人間生活学部, 教授 (70567635)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード子ども期 / 中世ヨーロッパ / 産業革命期 / 児童労働 / ストリートチルドレン / フィリピン
研究実績の概要

ライフコースにおける子ども期を位置付けて、理論研究、文献研究を行ってきた。とくに、歴史的観点からのアプローチとしては、ヨーロッパ中世においては子ども期という社会認識がなされていなかったということ、そのために、子どもは小さな大人として、社会的に位置づけられていたことを確認した。さらに、イギリスにおける産業革命期の非人道的なレベルでの児童労働へとつながり、社会的に容認され、助長されることになっていたことが把握された。
現代社会においても、実践的な家庭内生産活動に子どもが組み込まれながらも、子ども自身が、その生産活動を通じた人間性への成長へとつなげられることの意義は確認されている。しかし、そのような社会状況とは次元の乖離を有する、非人道的で、人間としての尊厳をも踏みにじる側面すら許容されている労働であったことが、今日の児童労働の本質的問題を示唆する点は決して少なくはないことが再確認された。
そのような文献研究と並行して、フィリピンにおける現地調査を実施した。メトロマニラであるケソン市において、ストリートチルドレンなどを保護しながら、生活の場を提供し、通学保障や教育保障などを実践している団体の子どもの施設を見学し、ソーシャルワーカーや支援員を中心に、インタビュー調査を実施した。現場では、担っている活動に対しての人材不足の状況もあり、また、活動場所が散在していることなどにより、インタビューをさせていただく時間を確保するには、かなりの困難性があること、記述式アンケートで回答してもらうのは、ある意味、インタビューに応じてもらうよりも、さらに困難性を伴うことであった。そうした中で、複数人に、事例をあげていただけたことの意義は大きいものがある。今後、データー整理と考察を加えていくことにしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

文献研究を通じて、今日に通じる児童労働として危惧される側面に着目し、その時代的背景を、中世ヨーロッパの子ども期に関する認識として、先行研究を通じて検討できたことは、子ども期がいかに変容してきたかという史実とともに、時代的背景や国や地域による社会的背景が異なることはもちろんではあるが、その本質的課題性という意味では、歴史性を踏まえ、今日的問題への教示ともなり得る文献研究の意義を再確認することができた。今後も引き続き、時空間的視野も広げた子ども期の把握や、とくに経済的困窮や路上生活者など、生活上の支障、困難性を抱えながら、子ども期を過ごしている層へのケアサポートに関して、多角的視点からの先行研究レビューと、それを通じた検討を行っていきたい。
今回の現地調査では、調査先としては単独箇所ではあったが、複数人の専門職の方々から、複数の具体的なサポート事例を挙げて頂けた。調査時間的にも、延べ時間としては長時間に及んだことはもちろん、内容的には、2~3回分の現地調査でやっと得られるインタビュー量にも及ぶ内容であったと実感している。
そのデーター化を含めて、今後取り組んでいき、先行研究レビューや文献研究で得られた知見からの検討によって、多角的に考察していけるように努力していきたい。
その意味で、おおむね順調に進展しており、社会的発信にもつなげていく所存である。

今後の研究の推進方策

まずは、現地調査で得られた調査結果について、必要に応じて、逐語録にも起こしながら、データー化に取り組んで行く。複数の課題設定のインタビューに対して、実際の事例を挙げて、話していただいているので、各人の回答事例を横断的に検討するというよりは、先にそれぞれの事例にかかる現地での社会状況や、個別の生活状況について、じっくりと認識していくことで、その事例の意味・解釈化を深めていく必要性を痛感させられた。その過程に、先行研究、文献研究も位置付けながら、事例のデーター化を図る。その上で、検討すべき視点を新たに見出し、再整理しながら、分析、検討を加えていきたい。
現代社会における先進諸外国での生活困窮層の子どもに対するケアサポートについての文献研究にも並行して取り組んでいきたい。先行研究レビューによる課題分析を通じて、国内におけるインタビュー調査の可能性も追及していく。

次年度使用額が生じた理由

プレ調査のための現地調査日程がとれず、現地調査時期がずれこみ、1回となったことが直接的な要因である。
しかし、結果的には、今回の現地調査では、複数回分の現地調査で想定していたインタビュー調査結果が得られたことにより、今後、調査結果のデーター化をすすめていくにあたり、物品購入が必要となる。また、具体的な事例による回答が数多く得られたが、それぞれの事例の理解を深めるための文献研究、資料収集が必要となったため、その費用が必要となった。また社会状況により、現地調査が可能となれば、再訪して現地調査を進める計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] ライフコースにおける子ども期の変容と家族関係――ヨーロッパ中世の子ども期と散華用革命期の児童労働2020

    • 著者名/発表者名
      渋谷光美
    • 雑誌名

      羽衣国際大学人間生活学部 研究紀要

      巻: 15 ページ: 11、20

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ライフコースにおけるケアサポートへの一考察――フィリピン国立児童養護施設の実情を中心に2019

    • 著者名/発表者名
      渋谷光美
    • 雑誌名

      地域ケアリング

      巻: 21 ページ: 60、61

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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