研究課題/領域番号 |
19K02203
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研究機関 | 羽衣国際大学 |
研究代表者 |
渋谷 光美 羽衣国際大学, 人間生活学部, 教授 (70567635)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの貧困 / 路上やスラムでの生活 / 性暴力被害と裁判 / ソーシャルワーク / フィリピンのNGO / 児童労働 / 産業革命期 / 西洋装飾文化 |
研究実績の概要 |
当該年度は、フィリピンにおける貧困や虐待等、何らかの理由で生活上の困難を抱える子どもへの教育と社会的ケアサポートの実情を把握すること、そして教育とケアのあり様に関する展望と課題を考察することを目的として、フィリピンでの現地調査を実施し、論文発表として社会的に発信した。 フィリピンでは、GDP成長率は高成長を維持している一方で、貧困率は21.6%であり、特に路上やスラムなど厳しい環境下で生活している子どもたちは絶対的貧困状態におかれ、生活上の困難から就学できない状況下にある。今回調査依頼をしたNGOは、メトロマニラの都会で路上生活やスラムでの厳しい生活環境下にある子どもたちを援助対象とするだけではなく、その子どもたちの家族状況をアセスメントした上で、とくに親たちへのかかわりを強化し、子どもたちが将来への希望を抱けるような支援をしていた。中でも性暴力被害の子どもが自分自身を解放できる過程として、裁判訴訟への準備期間、訴訟中も生活の立て直しとして支援し続けていた。通学できていなかった子どもたちに教育の機会が得られるように、教育現場の教師への意識変革も担ってきた過程が存在した。そのようなサポートを受けてきた子どもたちの中には、大学へ進学し就職した人もおり、とくにソーシャルワーカーやエデュケーターとして、援助する側の仕事を担っている人も少なくないことが把握できた。 また初年度から、生活上の困難を抱える子どもへの教育とケアという側面の歴史的な観点からの考察を深めるために、中世には存在しなかったとされる、西洋における「子ども」という存在の認識と、産業革命期に顕在化していた児童労働の問題との連関やその実態に関して文献研究を進め、論文発表として発信していた。今年度も、西洋装飾文化のもとでの児童労働について継続的に取り組んできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画していたイギリスでの産業革命期の児童労働に関する資料・情報収集に向けた渡航が、新型コロナウイルスの影響により、中止を余儀なくされたことが、その理由である。 昨年度のフィリピンの渡航では、計画していた以上に、現地調査での成果が得られたため、今年度は当初の計画通り、現地調査結果に関する分析と考察のための研究は進めることができ、論文として社会発信することにつなげられている。しかし、その後のフィリピンにおける現地調査の機会を得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画であるフィリピンにおける現地調査の分析をさらに進め、生活上の困難として多大な悪影響を及ぼしている児童労働に関して、歴史的観点から、子どもへの教育とケアサポートの連関性をふまえた考察に向けた年度として位置づける。 とくにイギリスを中心とした西洋における産業革命期以降の階級制度社会において、今日の生活文化にも通じるような装飾文化が開花していった時代に、農村での児童労働にとどまらず、都市部の工場やものづくりの現場で、労働者、職人とともに劣悪な環境下での児童労働が容認されてきた。その実情や変革期における、公的・私的な子どもへの教育とケアサポートの変遷に関して研究を進める。 今日の格差社会のもとで、生活上の困難を抱える子どもたちへ、将来の展望となり得る教育とケアサポートのあり様、その課題を考究していくため、歴史的観点からの考察を強化する。 そのためにも、新型コロナが終息したタイミングには、渡航による資料・情報収集を実施して、考究していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響による、渡航計画の中止と延期のため、次年度使用額が生じた。 新型コロナ終息後には、渡航による現地調査、資料・情報収取の実施のための費用として、またその調査に伴う諸費用、および調査結果の分析、考察と、研究成果の社会的発信のための費用とする計画である。
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