研究課題/領域番号 |
19K02210
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
猪飼 周平 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90343334)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | よりそい / 伴走支援 / ケアリング / 福祉国家 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様性・複雑性を特徴とする生活困難および支援ニーズに関して、A. 計量分析の基盤整備およびそれを支えるB. 理論的論点の2つの方向から研究を進めている。2021年度においては、2020年度に引き続き、主に理論的論点について研究が進められた。 戦後発達した福祉的支援は支援ニーズを基盤としている。この支援ニーズは、一般に①ウェルビーイング(幸福)の欠如、②社会的に許容されない生活状態(社会問題)のいずれかによって定義されうる。だが、①については厳密な意味において個人のウェルビーイングを測定する方法が知られていない、②については社会的に許容されない生活状態が本人が経験している生活の困難に適合する保証がないために、常に一定の恣意性が含まれることが免れない。2021年度においては、この恣意性が、社会政策、福祉国家の発達史においてどのように取り扱われてきたかについて理論的な観点から検討を加えた。 また、2020年度に引き続き、ミルトン・メイヤロフの「ケアリング」概念から抽出された「メイヤロフ基準」を用いて、ケアリング的行為(よりそい的行為)と非ケアリング行為(非よりそい的行為)の分類に関する検討も進められた。 2021年度においても、新型コロナウイルス流行のために、支援現場の混乱は続き、アンケート調査の実施等については一定の制約があったが、理論的研究を優先して進めることによって研究の遅滞を防ぐことができたといえる。その結果、総じて2021年度における理論研究によって、2022年度以降の研究の進捗にとっての有効な基盤の構築することができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度においては、本研究にとって大きな課題であった理論的論点について、計量研究に必要な水準まで深めることができた。したがって研究の進捗は、概ね順調であると評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度においても、新型コロナウイルス流行の影響が一定程度続くと考えられ、支援現場での作業に一定の制約があることが予想されるが、実施可能なところから研究を進めてゆくことで、全体として研究が遅延しないようにする方針である。すでに入手済みのデータの解析を優先する予定である。
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