本研究の目的は、高齢者のボランティア活動における「楽しさの共有」について、実証的、構造的に明らかにすることである。 たのしいこととつなぐことは、高齢者の孤立予防を実現する推進力である。たのしくないと人は参加しない。参加しても継続は困難である。また、必要に応じてサービス利用につないでもらえるシステムは、多くの人にとって魅力的である。本研究では、このことを長年にわたる大都市におけるコミュニティカフェの実践分析を通して、「たのしくつながる高齢者の孤立予防モデル」としてモデル化している。 今年度は、上記の「モデル」に基づき、新型コロナウイルス感染症が蔓延する状況における対応等に焦点を当てて調査を実施し論文作成を行った。 社会状況の変化にもかかわらず、高齢者が社会とのつながりを失わない取り組みの推進が期待されている。論文では、新型コロナ感染拡大状況における高齢者の孤立予防を目的としたコミュニティカフェの特性を明らかにした。研究方法は定性的(質的)研究法である。調査方法は参与観察とインタビューである。分析には定性的コーディングを用いた。分析の結果、高齢者の利用要因と利用に伴う変化は「安心の獲得」「たのしさの共有」、参加する住民ボランティアの継続要因は「たのしさへの共感と支持」「業務遂行の組織化」、そして、高齢者に参加とサービス利用を促す相互関係は「活動を継続できる関係」「期待される機能を維持できる関係」として明らかにされた。このことから、「カフェ」の今日的特性は、「期待される機能を維持できる関係のなかでの、参加者によるたのしさへの共感と支持の展開」と定義できた。
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