研究課題/領域番号 |
19K02217
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
村山 浩一郎 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (60389484)
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研究分担者 |
本郷 秀和 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (90405556)
垣迫 裕俊 九州産業大学, 地域共創学部, 教授 (80533372)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域福祉計画 / 地域共生社会 / 策定ガイドライン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2017年の社会福祉法改正後に地域福祉計画(以下「新・地域福祉計画」)の策定を行った市町村を対象に計画策定方法についての実態調査を行い、1)改正前と比較してどのような点が変わったのか、2)改正後の計画策定の方法論的課題は何かを明らかにすることである。 この研究目的を達成するため、研究期間3年間のうちの2年目となる今年度は、1)2017年に国が通知した「新・地域福祉計画」の「策定ガイドライン」(以下、新ガイドライン)の検討と、2)「福岡県内の5つの市町村を対象とした事例調査」を行った。 1)では、新ガイドラインと2002年に発出された旧ガイドラインを比較し、新ガイドラインではどのような点が改定されているのかを明らかにした。2017年の法改正により計画記載事項が追加されているため、新ガイドラインの「計画に盛り込むべき事項」は当然改定されているが、本研究では、それに伴い、「計画策定の体制と過程」に関する諸事項がどのように改定されたかに注目し、検討を行った。結果は「地域福祉計画策定ガイドラインにおける策定方法の変化-新旧ガイドラインの比較より―」(『福岡県県立大学人間社会学部紀要』第29巻第1号に掲載)にまとめたが、今後は、新ガイドラインの「計画策定の体制と過程」に関する諸事項が、実際に市町村の計画策定過程でどのように実施されているのか、福岡県内の自治体を対象にしたアンケート調査で明らかにする予定である。 2)については、福岡県内の5つの自治体より調査協力について同意を得、現地での資料収集とインタビュー調査を行った。その結果、どの自治体においても、「新・地域福祉計画」の策定にあたって、市町村福祉行政における地域福祉計画の位置づけや役割を再定義しており、それに伴って、計画策定・推進体制の大幅な見直しを行っていることがわかった。現在、収集したデータを整理中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、「新・地域福祉計画」の策定方法の変化を把握するため、1)「福岡県内の5つの市町村を対象とした事例調査」、2)「福岡県内の全市町村(60市町村)を対象とした質問紙調査」の2種類の調査を実施する予定である。 1)の調査については、2019年度(初年度)に所属研究機関の倫理審査を受け、承認を得た。そして、2019年度後半から2020年度にかけて、調査対象となる5つの市町村を選定し、調査協力について同意を得て、インタビュー等の調査を実施した。調査対象とした自治体は、人口5万人以下の小規模自治体が3団体、人口10万人前後の中規模自治体が1団体、政令指定都市が1団体である。 交付申請時の研究計画では、1年目に2事例、2年目に2事例、3年目に1事例を予定していた。しかし、研究を進めていくと、本研究の課題である「計画策定の方法」に関するデータを収集するためには、できるだけ自治体が策定を行った年度に調査を行う必要があることがわかった。つまり、計画策定作業の詳細を把握するためには、計画策定の直後に実際に策定を担当した職員にインタビューする必要がある。そのため、2020年度(2年目)に策定を行う自治体を中心に調査対象を選定し、2020年度後半に5事例の調査を実施した。 以上のように、1)の調査については、変更を伴いながらも、概ね計画どおりに進めているが、当初3年間で5事例を予定していたところを2020年度の1年間で5事例の調査を実施したため、2)のアンケート調査の準備についてはやや遅れることとなった。 しかし、2)のアンケート調査の実施に向けて、先行研究の整理・分析、「新・地域福祉計画」のガイドラインの検討などを行い、アンケート調査のリサーチクエスチョンは明確になってきているので、最終年度となる2021年度に実施し、遅れを取り戻すことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(2019年度)の実績報告書で示した研究計画では、1)事例調査については、2020年度に4事例、2021年度に1事例を調査し、2)アンケート調査は最終年度(2021年度)に実施するとした。今後も、基本的には、この研究計画に沿って進めていく予定である。ただし、新型コロナウィルスの感染が再拡大しており、調査を行う際には、対策のため多忙を極める自治体の協力が得られるよう十分に配慮し、調査時期や方法を慎重に検討していく必要がある。 前項で述べたとおり、2020年度は事例調査に注力したため、2)のアンケート調査については、調査票の作成や倫理審査の受審等の準備がやや遅れているが、できるだけ早く作業を進め、2021年度の前半には実施したい。 1)の事例調査については、2020年度に当初予定していた5事例について調査を実施しているが、今後、以下の2点の対応を行いたい。 当初の研究計画では団体規模のバランスを考慮し、調査対象は指定都市1団体、中規模団体2団体、小規模団体2団体とする予定であった。しかし、2020年度に実施できた市町村は、指定都市1団体、中規模自治体1団体、小規模自治体3団体であるため、中規模自治体が1団体不足している。そこで、2021年度に「新・地域福祉計画」を策定する福岡県内の自治体の中から改めて中規模自治体1団体を調査対象として選定し、インタビュー調査を実施する。結果として、調査事例は当初計画の5事例から1事例増やし、6事例になる予定である。 もうひとつの対応は、2020年度に調査を行った自治体に対する追加調査の実施である。今後、収集したデータを整理・分析していく過程で、追加調査が必要になることが考えられる。必要が生じた場合には、自治体の状況に配慮しつつ、速やかに実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた5事例について2020年度にインタビュー調査等を実施したが、自治体の計画策定作業が概ね終了した年度末の時期(12月~3月)に主に調査を実施したため、調査依頼を含め、1事例につき2~3回の現地訪問となった。予算上は、1事例につき5~6回程度現地訪問できる旅費を確保しているため、「事例調査のための旅費」がすべて使用されなかった。この旅費に関する2020年度の残余分は、2020年度に調査を行った5事例の追加調査や6事例目として新たに追加する1事例の調査など、次年度予定されている調査に使用したい。 また、2020年度の調査が年度末(12月~3月)に実施されたため、2020年度に収集したデータの整理・分析作業が完了しておらず、「インタビュー調査等の整理作業補助のためのアルバイト雇用の人件費」もすべて使用していない。この人件費に関する2020年度の残余分は、次年度に引き続き行う予定の2020年度調査のデータ整理作業に使用するとともに、2021年度に行う追加調査等のデータ整理作業にも使用する予定である。 なお、次年度実施予定の県内市町村に対するアンケート調査と報告書作成に関連する予算は、計画通り使用する予定である。また、2020年に社会福祉法が改正され、本研究テーマに関連する新たな施策動向が見られるため、これまでの物品費の残余分を使用して、次年度に関連資料・文献を収集したい。
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