研究課題/領域番号 |
19K02222
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
菱川 愛 東海大学, 健康学部, 教授 (30338769)
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研究分担者 |
谷口 恵子 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (50383138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 児童虐待 / 子どもの願い / 虐待再発防止 / 援助計画 / 品質管理 |
研究実績の概要 |
「虐待だけなくしてほしい。そして家族と元通り生活したい」と言う子どもたちの一番の願い(特性)を叶えることができた要因を浮き彫りにする質的的研究を行った。まず児童相談所への虐待通告後、フォレンジック・インタビューを実施した事例、すなわち司法、社会福祉の両専門機関がかかわる重篤事例においても尚、子どもの願いが大切にされ、再発防止に盤石な環境を整えることができた事例の抽出を3か所の児童相談所にお願いした。次に得られた6事例の担当者らを対象にインタビュー調査を行った。QA(品質管理)の分野に見出される特性要因図を下敷きに、別途行ったブレインストーミングから得られた大骨(家族、子ども、ワーカー、組織、プログラム、計画、フィードバック)を中心に聞き取る半構造的面接を行った。得られた音声データは、文字起こしし、MAXQDAを用いて分析を行った。 インタビュー調査の下敷きとなった大項目の抽出については、東京福祉大学・大学院紀要 1 0巻2019)に「短報」として 掲載することができた。
虐待対応の実践に見出される複層的な特性要因を踏まえ、子どもの願いを大切にしつつ、虐待再発防止のための盤石な環境をつくっていく援助計画を導くスキルを育む教育教材、ツールの可能性についても検討を行った。児童相談所職員らの実践報告が行われる研究会などに参加した。虐待対応の第一線に従事する現代の若手職員らによりフィットした専門性向上のアプリケーション・ソフトという選択肢についての検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度(初年度)は、予定通り「どのように子どもの願いを最後まで大事にし、虐待再発防止を確実にした援助計画を作成するのか」の現状について、児童相談所の協力を得て質的な研究を行うことができた。
7月から8月にかけて4回、Skypeによる打ち合わせを行い、児童虐待対応における望ましい特性の要因を明らかにするために「特性要因図」が分析の枠組みとして有効と考えるに到った。特性要因研究の第一ステップとして、9月に児童虐待対応経験のある5名の自治体職員の方とブレインストーミングを行った。10月から12月にかけて児童相談所と研究協力の内容について協議し、事例の選定をお願いした。併せて「人を対象とする研究」に関する倫理委員会(東海大と東京福祉大学)に申請をし、承認を得た。1月から3月にかけて3つの児童相談所から6事例に対する半構造的インタビュー調査を実施した。3月から現在までの間、音声データの文起こしを行い、MAXQDAを用いた分析を行った。本研究の成果の発表を検討しているところである。
さらに2020年度の研究の準備として、イギリス、アイルランド等において児童虐待対応のソーシャルワークとITの活用の事例に詳しいPippa Young氏(Elia, Ltd., Director of Information Technology and Practice Alignment Department) とミーティングを行った(2月)。児童虐待対応における専門性向上のための媒体としてモバイル・ソリューションやアプリケーション・ソフトの可能性についての示唆を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度(2年目)と2021年度(3年目)は、「子どもの願いと虐待再発防止を確実に大事にした援助計画を作成する」児童虐待対応従事者らの専門性向上を目的とした教材開発に取り組む年である。想定外のCOVID-19の感染拡大の中、従来的な知識の普及方法、いわゆる対面での研修が過去の話になる程の社会の変化・転換を見据え、海外の動向の調査、異業種(IT関連、SE)との協議を進めていきたい。2020年度中にポスト・コロナ社会における専門性向上の機会、機械(デバイス)、教材についての方向性を見出し、2021年度のアクション・リサーチを滞りなく実施できる準備に専念したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月上旬、質的研究ソフトウェアMAXDAを2ライセンス購入の計画をし、見積書まで得ていた。しかしながら、この商品が「物品」という認識に欠いていたため、学内の伝票締め切り日を過ぎてしまい、購入ができなかった。
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