介護保険施設の入所者の約8割に認知症が見られることが知られている。認知症高齢者は、その疾患故に自らの尿意に気づきにくくなることがあり、また見当識障害故にトイレの場所を見つけられないこともある。そのような理由からトイレでの自立排泄が出来ず、尿失禁に至ることがある。このような尿失禁を機能性尿失禁という。機能性尿失禁は、介護福祉職の介入だけでオムツに頼らない支援が出来る可能性があると言われている。最初に排尿チェック票にて「溢流性尿失禁」「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「機能性尿失禁」のどのタイプの可能性が高いかを判断し、「機能性尿失禁」の対象者を特定し、排泄支援の改善の取り組みを行うことにした。残尿測定器を用いて、特別養護老人ホーム2施設、計5名の対象者に対し排泄日誌を作成しそれに基づいて排泄支援の方法を定時のオムツ交換からその対象者ごとに設定した誘導時間にトイレ誘導する方法に切り替えていった。排尿日誌の作成は、午前7時から午後22時までの時間帯に実施し、2時間ごとに測定することを3日間実施した。これでそれぞれの対象者の大体の排尿リズムを把握することが出来た。それを基にトイレ誘導を行うが、日によってズレが生じることもあった。その時の様子から次の誘導時間を調整し、この微調整を繰り返し、その人に相応しい排泄間隔等を導き出していった。最終的には、完全に尿取りパッド等を外すまでには至らなかったが、尿取りパッド等を充てていてもその中に排尿し、それを交換するということはなくなっていった。またパッドの大きさもその人に相応しい大きさに変更し、徐々に小さくしていくことでパッドを着用している時の負担感も軽減していったし、費用面でも負担が小さくなっていった。排尿日誌を作成するために、残尿測定器を使用することは有効であった。
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