研究課題/領域番号 |
19K02231
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研究機関 | 武庫川女子大学短期大学部 |
研究代表者 |
松端 克文 武庫川女子大学短期大学部, 心理・人間関係学科, 教授 (90280247)
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研究分担者 |
堀 善昭 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (00611352)
増田 和高 武庫川女子大学短期大学部, 心理・人間関係学科, 講師 (40596962)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラットフォーム / 協議体 / 地域共生社会 / 我が事 / 丸ごと / 住民主体 / 地域福祉活動の展開モデル / 包括的支援体制 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、介護保険法の改正や社会福祉法人改革を含め社会福祉法の改正などにおいて市町村で整備が進められている各種の「協議体」を住民の参加とともにさまざまな専門職が集い、交流し、対話し、学び合い、議論する場・機会としての「プラットフォーム」と捉え、その形成や運営の仕方、さらにはそこでの議論を実際の活動へと展開していくための「地域福祉活動の展開モデル」を試行的に構築することにある。 現在の社会福祉に関する国の政策は、「地域共生社会」の実現を目標として、市町村に策定が求められる地域福祉計画にも関連づけて、高齢、障害、子ども、生活困窮などそれぞれの分野で進められている支援体制づくりを包含した「包括的な支援体制」の整備を進めることに力点が置かれている。その背景には「8050問題」や「ダブルケア」などの問題に象徴される「複合多問題」や「制度の狭間の問題」が顕在化し、既存の社会保障の制度・サービスの枠組みでは対応しきれない課題が増大しているという状況がある。 研究方法としては、地域福祉計画の策定や住民主体による福祉活動が活発に展開されている先駆的な自治体において、関係者へのヒアリングおよびインタビュー調査を行うことを通じて、仮説的に「地域福祉活動の展開モデル」を構築し、それをアクションリサーチの手法を用いて、実際の現場にフィードバックすることを通じてさらなる精緻化を図っていくという手法を用いる。 2019年度は、学術論文、インターネットでの検索、兵庫県西宮市、滋賀県東近江市、大阪府阪南市、和歌山県田辺市などの事業担当へのメールでの情報収集などを通じて、地域住民を主体として各種専門職も巻き込みながら運営されているプラットフォームとしての協議体の運営状況の把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今日の社会福祉政策は、深刻化する生活課題に対して、財源の確保も含めて法制度の抜本的再編成という方向ではなく、市町村における総合的で包括的な相談支援体制の構築と、地域での福祉課題の解決を住民参加と専門職・機関との協働によって図っていくという方向として解釈することができる。 こうした政策動向をふまえると、市町村ごとでの総合的で包括的な支援体制の構築に関連づけて、住民参加をいかに促進していくことができるのかということが重要な課題となる。図でも示しているように、【1】総合的な相談支援体制づくりのためには、住民との協働が不可欠であり、【2】住民主体による課題把握や課題解決においても専門職や専門機関との協働が不可欠となる。こうした総合相談や住民参加の結節点となるものが【3】の「プラットフォーム」としての協議体である。こうした協議体を市町村ごとでどのように設置し、運営していくのかということが、市町村ごとでの地域福祉推進の成否を分ける鍵となる。住民参加をどのように図れば対話が促進され、専門職・機関との協働が進み、課題解決に向けての地域福祉活動が展開できるのか、こうしたことを明らかにするこ とは、これからの人口減少・超高齢社会を乗り切っていく上での喫緊の課題である。 そこで本研究では、こうした協議体を地域における「プラットフォーム」として捉え、全国で先駆的に取り組んでいる地域での事例を分析・整理し、類型化することで、その形成、運営、そしてそこでの議論を通じて福祉活動へと展開していくための方法を実証的な調査に基づいて、「地域福祉活動の展開モデル」として試行的に構築し提示する。 しかし、2019年度は、上記のように兵庫県西宮市、滋賀県東近江市、大阪府阪南市、和歌山県田辺市などの現状把握と事業担当者からの情報収集に留まった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では考え方のスキームとして、協議体を「プラットフォーム」として捉え、その立ち上げや運営に関するポイントを「住民の参画」(どのように住民の参画を図っているのか)と「協働」(住民と専門職との協働・専門職間の多職種連携)に置き、運営レベルでは個別事例の深刻さへの「共感」や地域の課題への「気づき」、そうした課題解決に取り組んでいくための「対話」と「学び合い」に焦点をあて、その成果としては議論が具体的な活動へと転化する「地域福祉活動への展開」にどのように結びついているのかという枠組みで分析・検討する。 協議体の捉え方については、地域福祉計画・活動計画の策定に伴う住民懇談会や地区社協や地区福祉委員会などの住民の主体的な地域組織などをプラットフォームとして幅広く捉えて分析の対象とする。 これまでの先行研究などをふまえ、島根県松江市、社会福祉法人のネットワーク化を推進している埼玉県、西宮市、阪南市、東近江市、田辺市などを対象として協議体と地域活動との関連について関係者にヒアリングおよびインタビュー調査を実施し、質的データ分析法(佐藤郁也2008ほか)の手法に基づき分析・整理し、「住民の参画」「協働」「共感」「気づき」「対話」「学び合い」などに着目して、議論を実践へと展開してくための要因を抽出し、仮説的に「地域福祉活動の展開モデル」を構築する。こうした調査と並行して、モデルをもとにアクションリサーチ的な介入を通じて、さらなる精緻化を図っていく。フィールドとしては、兵庫県西宮市と滋賀県東近江市を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程調整の関係上、各地でのフィールドワークが実施できず、旅費、謝金などを使用しなかったため。
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