研究実績の概要 |
新型コロナウィルス流行により調査研究が一時中断していたが、調査研究中断前に収集していた研究調査データを異なった分析手法から解析を行った。その結果、元患者の子ども群と一般群全体の比較を行った結果、身体的健康(t=-4.597, df=87.643, p<.001)、友だち(t=-2.791, df=103, p<.01)、QOL総得点(t=-2.791, df=103, p<.01)において、元患者の子どもたちが有意に低いという結果となった。学校種別に検定を行った結果、小学生の場合、元患者の子ども群と一般群との間には有意差がみられなかったが、身体的健康、精神的健康、自尊感情などの項目において 極端に低い外れ値がみられ、状態の良くない子どもがいることが明らかとなった。中学生の場合、身体的健康(t=-2.947, df=46, p<.05)とQOL総得点(t=-2.415, df=46, p<.01)において有意差がみられ、元患者の子どもたちの方が有意に低い結果となった。高校生の場合、身体的健康と学校生活に有意差がみられた。身体的健康は一般群の方が有意に高く(t =-2.474, df= 17.474, p<.01)、学校生活については元患者の子どもたちの方が有意に高かった(t=2.889, df=22.977, p<.01)。 今回の研究については、子どもを対象として包括的健康尺度(Kid-KINDL)を用いて実施した。しかし、社会的少数者の子どもの場合、精神的に複雑な機序を抱えていることから、尺度の妥当性・信頼性が不十分と考えられる点もあると判断された。そのため、この研究を足がかりとして、社会的少数者の子どもを対象とした包括的健康尺度の開発に着手する予定である。
|