研究課題/領域番号 |
19K02244
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
須田 仁 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (40369400)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 高齢者虐待防止法 / エルダーミストリートメント / カットオフライン / 養護者要件 / 権利侵害 |
研究実績の概要 |
高齢者虐待防止法の定義に関する現状認識として、養護者要件によって虐待が認定されることは逆に権利侵害を受けている高齢者を保護することができないケースがあること、虐待がどうか判断するカットオフラインが定められていないことがわかった。 日本高齢者虐待防止学会蒲田大会に参加し、その結果高齢者虐待防止法上の高齢者虐待の定義に関する研究及び検討は現状追認であった。 1月には台湾における虐待通報共通番号113の取り組みについて衛生福利部保護服務司から説明を受け、実際の虐待通報を受理しているオフィスを見学、通報受理についてレクチャーを受けた。児童虐待から高齢者虐待、障害者虐待、DVに至る全ての虐待について、通報番号を「113」に統一、台湾全土からの通報に対応している。日本のように対象者ごとに防止法が異なっている場合であっても参考となる。 研究班会議を開催、高齢者虐待におけるカットオフラインについて議論を行った。現在の高齢者虐待防止法では①高齢者が自立している場合、②養護者が疾患や障害があるまたは養護する能力がない場合、養護者による権利侵害が行われていても高齢者虐待にあたらないと判断されるケースが想定される。また高齢者・養護者と線引きできない不明瞭なケースの場合、高齢者虐待にあたらないのではないかと逡巡するケースもある。 議論の成果として「他者から人権や尊厳が侵害されていれば虐待とする」という見解になった。WHO(2015)の定義に基づくべきであろうということである。包括的な概念としての「広義の虐待」と高齢者虐待防止法による「狭義の虐待」に区分できる。今後の研究ではこの両者を踏まえ、実際の高齢者虐待通報台帳からどのようなケースの場合、虐待と認定しているのか検討することとしたい。その中で狭義の虐待としては認定されていないが広義の虐待としては認定できるケースがどのくらいあるのかを明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査するために必要な高齢者虐待の定義に関する検討は終えており、実際に調査する段階に来ている。 当初の予定であった本研究に必要な「高齢者虐待通報受理状況」のデータについて、共同研究に必要な協定書の締結をする手続きが遅れており、そのため学内のヒューマンスタディに関する倫理委員会での倫理審査の申請ができていないため、上記データを利用することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に必要な「高齢者虐待通報受理状況」のデータについて、共同研究に必要な協定書の締結をし、学内のヒューマンスタディに関する倫理委員会での倫理審査を終了、倫理審査承認を受ける。 その後、平成29年度から31年度までの台帳に基づく事例のスクリーニングをし、分析・検討・整理を行いたい。その結果をまとめることができれば、令和2年度の日本高齢者虐待防止学会にて成果を発表したい。 また米国における成人保護プログラムに関して視察を行いたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費及び人件費・謝金について、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、訪問調査等の回数が少なくなり旅費と謝金に残額が生じ、次年度使用額が生じている。またその他の費用についても新型コロナウイルス感染拡大に伴い同じく残額が生じている。しかし次年度は本格的にデータの分析、検討等を行う予定のため、人件費やその他の費用を用いると思われる。 また、米国視察も予定しているため、旅費がかかる予定である。
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