研究課題/領域番号 |
19K02244
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
須田 仁 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (40369400)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 高齢者虐待防止法 / WHOの高齢者虐待の定義 / 養護者による高齢者虐待 / 高齢者虐待防止法で保護されない高齢者虐待 |
研究実績の概要 |
2017年度から2019年度に千葉県松戸市に通報された高齢者虐待事例のうち「養介護施設従事者等による虐待以外の事例」を検討した。通報事例525例のうち、記録が正確と判断できる497例を研究対象とした。高齢者虐待防止法の規定に合う虐待事例は299例、WHOの高齢者虐待の定義に合う事例は475例であった。同法で虐待でないと判断される198例のうち176例が、WHOで虐待と判断された。 すなわち、研究対象の497例の内35.4%がわが国の法規定では虐待と判断できなかった。高齢者虐待の通報事例には同法で保護されない多くの虐待事例が実態として存在する。これらを救済し得る幅広い虐待概念の法規定が望まれる。 上記を「高齢者虐待防止研究」(Vol.18/No.1)に投稿、掲載された。 また、第17回日本高齢者虐待防止学会WEB大会において「「同居者虐待」を養護者虐待に加えて概念づける実践的・法的意義について」と題し、発表を行った。「法的虐待」+「同居者虐待」によって保護される事例は、現在の法的虐待の概念による保護対象よりもはるかに多く、「WHO虐待」の保護対象よりやや劣るとはいえ、現行法で保護されない多くの高齢者虐待事例を救済しうる。高齢者虐待防止法に規定する「養護者による高齢者虐待」に「同居者による高齢者虐待」を加えることにより、現行よりも、はるかに多くの実態的な高齢者虐待事例を保護することが可能となると考えられると論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
松戸市の通報事例を集計、分析し一定の成果が得られている。その部分については研究計画通りに進められている。 しかし、WHOの高齢者虐待の定義の基となっているアメリカテキサス州の成人保護制度プログラム上の高齢者虐待の定義に関する実態等を実地調査することが新型コロナウイルス感染拡大によってできていない。 その点を含めると研究計画書上はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の取り組みについて2点あげる。1点目はアメリカテキサス州への成人保護プログラムに関する実地調査である。調査の障害となっていた、新型コロナウイルス感染状況が落ち着き、渡米することが可能な状況である。また帰国時の待機についても緩和することが予想される。この状況が続けば10月をめどに実地調査を実施したい。 2点目は警察による高齢者虐待通報のうち、9割が高齢者虐待防止法上の高齢者虐待に当たらないという分析結果が出ている。その内訳を詳細に分析することにより、養護者要件に縛れる高齢者虐待防止法の限界を提示していきたい。2点目については高齢者虐待防止研究に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により、研究計画で示したアメリカでの実地調査ができていない。そのための旅費及び謝金が次年度使用分として生じている。 渡米のための航空運賃や宿泊費、謝金、消耗品費などを令和4年度に使用する予定である。
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