研究課題/領域番号 |
19K02250
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
藤原 千沙 法政大学, 大原社会問題研究所, 教授 (70302049)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地方自治体 / ひとり親家族政策 / 母子福祉 / 地域福祉 / 新型コロナウイルス感染症 |
研究実績の概要 |
戦後日本の母子福祉は、地域の当事者団体が法制度の拡充を求め、多くの自治体では国が定めた事業を地域の当事者団体に委託して実施してきた。今日では一部の自治体で当事者団体との事業委託関係において変化がみられる一方、地域住民が抱える生活課題を地域住民の支援で解決を図る住民同士の支え合い(互助)が「地域福祉の推進」として強調されつつある。本研究は、国が定めるひとり親家族支援事業が地方自治体で制度化される過程と具体的な個別事業の運営実態を検証し、地方自治体のひとり親家族政策と地域福祉の課題を探ることを目的とする。 2019年度に開始した本研究はヒアリング調査を中心として設計していたが、2020年度に顕在化した新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、ヒアリング調査からアンケート調査を中心とする方法へと切り替えた。また地方自治体の視点に加えて、当事者の視点から自治体の政策を検証するため、シングルマザー当事者団体・支援者団体とともに2020年7月から2021年7月にかけて計13回の当事者調査を行った。速報性を重視して調査結果はインターネット上で公表し、コロナ禍における国や自治体のひとり親家族政策への反映に努めた。またテーマ別に調査結果を分析した課題別レポートを2021年4月から2022年2月にかけて5本発表し政策提言を加えた。 資料研究においては、2021年度も緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が断続的に続いたことから都道府県を超えた移動をともなう出張は控え、東京都内の図書館・資料館とインターネット上で入手できるデータベースを利用してこれまでの研究を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて新たに導入した当事者調査(新型コロナウイルスの影響によるシングルマザーの就労・生活調査)によって、児童扶養手当、就学援助、ひとり親家庭日常生活支援事業、公営住宅、住居確保給付金といった政策・制度へのアクセスが地方自治体によって異なることが具体的に明らかとなった。調査の設計と分析の過程で、地方自治体の窓口や現場の実態を確認するために、電話やメールで聞き取りを行ったことから、当初予定していたヒアリング調査とは異なるものの、地方自治体の側からみた政策・制度の運用上の課題も聴取することができた。このアンケート調査の実施と分析に必要な費用は、当初の研究計画では計上していなかったため、翌年度の研究費の一部を前倒し支払請求し、2021年度の研究に充当した。 資料研究においては、各時期の法令のみならず厚生省が地方自治体に発出した通知を確認しながら政策分析を行った。すでに廃止された通知で、現物確認ができず、発出時の通知内容が具体的にわからないものが一部あり、探索を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの自治体データの再分析、当事者調査からみた自治体の政策・制度の運用を踏まえて、地方自治体のひとり親家族政策と地域福祉の課題の検討を行う。新型コロナウイルス感染症の影響も加味しながら、地方自治体と事業委託団体に対する聞き取り調査も可能な限り実施する。資料研究については、特定の自治体を対象に政策の展開を深堀りするのではなく、地方自治体の政策運用に影響を与える国の政策の動向に焦点を絞り、通知レベルまで含めた検討を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度のアンケート調査の実施と分析に必要となった費用に充当するため、翌年度の研究費の一部を前倒し支払請求した。前倒し支払請求は10万円単位だったため、充当した後の残額が次年度使用分となった。前倒し支払請求する段階で、2021年度と2022年度の研究計画を変更しており、次年度分の使用計画の変更は必要ない。
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