2021年度は合計4回の定例研究会を実施し、内1回は国内外の情勢に詳しい弁護士を招いて討論した。日本で制度利用に警戒感が乏しく、他の制度開発に至らない理由として、職業後見人による「業務」が成立する構造や公的な「お墨付き」が重視される国民性、安定的な権限を利用する方が合理的で「権利擁護」に適うとの認識がある等の見解が述べられた。さらに、20世紀的な福祉サービスが特殊化/排除化されたサービス体系の中にあり、それを再度構成し直し、多様性の中で他者と生きることを保障し、人間の尊厳に統合する生存権の再構築が問われており、それが国連障害者権利条約で提示された「人権モデル」なのではなのではないかとの提起があった。 さらに他の3回の研究会で、近年あった生活保護制度と成年後見制度に関する判例評釈を巡る検討、報告書内容の検討、後述する成年後見制度に関するアンケート調査結果に対する社協職員のコメントを得て、討議を行った。 新型コロナ感染症の影響により、実施を見送っていたアンケート調査は、X県社会福祉士会及び同県社会福祉協議会の協力を得て11月に実施し、127件の回答を得ることができた。調査結果の概要は、下記の通りである。 ①成年後見制度については概ね高い評価が得られているが、本人の主体性発揮や現行制度以外のしくみの必要性については、一定のゆらぎがみられた。さらに市民後見人についても、設問により回答のバラつきが散見された。これらの課題を補遺調査する必要性が示唆された。②医療同意を巡る自由回答では、医療従事者を含めたチームによる判断の必要性が重視され、ソーシャルワークの脆弱性を後見人として補わざるを得ない状況の指摘もあった。③包摂社会に関する自由記述では、その必要性を認める一方で、犯罪被害に合いやすい人々に対する措置、寛容性や失われた社会への対応、幼少期からの教育の必要性等が指摘された。
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