期間全体の研究方法として、①ホームヘルパーの医療的ケアに関するヒューマンエラーの文献レビュー、②医療的ケアを受ける利用者に対するインタビュー調査の分析、③医療的ケアを行うホームヘルパーへのインタビューおよび参与観察と分析を実施した。 ①先行研究におけるホームヘルパーの医療的ケアのエラーについては、詳細は記載されていなかった。そのため、ホームヘルパーのケア全般についてヒューマンエラーをレビューした。その結果、転倒、転落、骨折、創傷、誤投薬などの広範囲なエラーが報告されていた。②医療的ケアを受ける利用者のニーズとして「安全で確実なケアを受けたい」「介護職ができる医行為の範囲を広げてほしい」「家族介護者の負担を軽減してほしい」「ケアの体制や使用機器を改善してほしい」が挙げられた。③医療的ケアを行うホームヘルパーへのインタビューおよび参与観察から、非医療職が実施できない医行為であるが現場で求められる「グレーゾーン」のケアがあることがわかった。それには、利用者のニーズである「たんの吸引を規定よりも深く行うこと」や、現場で当然に行われている「胃ろうからの薬の投与」などが含まれていた。ヒューマンエラーに関しては、医療的ケア実施の際の重大な事故はなかったが、事故に至らないインシデントは多数語られた。 医療的ケアの事故防止のためには、事故につながるグレーゾーンを開示して実施範囲を検討し安全を確保すること、連携や報告の体制整備、適切な福祉機器の使用、ホームヘルパーの個々の状況に合わせた研修などが必要と考えられた。
|