本研究は、精神障害者リハビリテーションモデルの1つであるクラブハウスモデルが実施している当事者参画型の独自の評価システムである「国際認証(以下、認証)」に着目しながら、わが国の精神障害者施設の現状に応じた当事者参画型の評価のあり方を考察した。 精神障害者施設における当事者参画型の施設評価の実情を把握するため、地域活動支援センター職員へのアンケート調査(2019年度)、精神障害者施設の施設長へのアンケート調査(2020年度)を実施した。その結果、当事者と施設評価を行うことで「新たな気づき」「支援の質の向上」「意見の尊重」「環境への影響」「職員の変化」につながり、職員や施設にとってプラスの変化をもたらすと考えていることが分かった。一方、難しさとして「当事者の本心が出づらい」「職員への攻撃」「個別対応の必要性」「状態・症状への影響」「当事者と施設との関係性の変化」を危惧していることが明らかになった。 クラブハウスの当事者が参画というものをどのように捉えているのかを明らかにするために、フォーカスグループインタビューを行った(2022年度)。また、国内3ヶ所の認証を参与観察し、認証に関与した当事者へのインタビュー調査(2022年度)を行った。その結果、クラブハウスは当事者と職員が協働して全ての活動や運営を行うことが国際基準に明示されているため、認証も当事者が常に関与していることが分かった。一方、「職員主導で認証の準備が進められた」「限られた当事者だけの参画になった」「認証の意味を当事者の多くは理解できていない」などの意見もあり、施設評価をする際に留意しなければならない部分も明らかになった。 COVID-19の影響で研究計画が大幅に変更となり、当事者の声や思いを十分に集めることができなかったが、精神障害者施設の職員や国内のクラブハウス関係者から貴重なデータを得られたことは成果である。
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