研究課題/領域番号 |
19K02259
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
坂田 周一 西九州大学, 健康福祉学部, 教授 (20133473)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会支出 / 相対的貧困率 / 子どもの相対的貧困率 / 高齢者の相対的貧困率 |
研究実績の概要 |
1.OECDにおける社会支出について1960年以降のデータの収集が完了した。 2.データベースの分析に基づいて、OECD諸国における相対的貧困率と社会支出との関連性について相関分析を行った。結果の概要は以下のとおりである。 OECD諸国の多くでは、子どもよりも高齢者の貧困率が低いが、人口全体の貧困率が16%を超える国では、逆に、子どもの貧困率が低く高齢者の貧困率が著しく高く、それが当該国全体の貧困率を押し上げている。また、アメリカ合衆国では、子どもの貧困率(20.9%)も高齢者の貧困率(22.9%)も20%以上と高く、子どもと高齢者世代の無視しえない割合の者が困難な状況におかれている。国の経済力として各国の「一人当たりGDP(国内総生産)」、社会福祉施策の水準として「公的社会支出の対GDP比」を用いて、こども、高齢者、全人口の貧困率との相関係数を計算した。「一人当たりGDP」と3つの貧困率との相関係数は、符号がマイナスの負の相関であることから、経済水準が高いと貧困率は低い関係があることはあるが、係数の絶対値が0.3台の低い数値であった。「社会支出の対GDP比」と3つの貧困率の相関係数は、いずれも負の相関を示し、社会福祉施策の水準が高い国では貧困率がおおむね低いことが示された。係数の絶対値が0.4~0.6台であり、「一人当たりGDP」よりも強い相関関係があることがわかる。特に、高齢者の貧困率との相関係数は-0.636と絶対値が大きい値になっている。これは、社会支出に占める高齢者向け支出が多いためであろう。貧困率が再分配後の可処分所得を基に計算されていることから、年金その他の社会保障給付金による再分配を経て低所得者の所得が引き上げられたことで貧困率が低下したものと推察できる結果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記3点を実施したことにより、本研究はおおむね順調に進展していると考える。 1.OECDにおける1960年以降における政策分野別の社会支出データを収集することでができた。 2.純社会支出の算出における諸指標に関する文献資料を収集した。 3.社会支出と相対的貧困率との間の相関分析を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度においては、政策分野別社会支出についてクラスター分析および社会支出の因子構造分析を行うこととしている。また、純社会支出の算定において重要な要素となる租税支出型福祉制度に関する資料収集を行うこととしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
文房具の見積もり価格と納入時価格の間に差額が生じたため。
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