研究課題/領域番号 |
19K02291
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
永井 毅 山形大学, 農学部, 教授 (10385502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無塩醤油様調味料 / 製造技術開発 / 健康機能性評価 / 食味 |
研究実績の概要 |
研究計画に従い試醸した無塩醤油様調味料の健康機能性解析を行なった。抗酸化性試験では、いずれの無塩醤油様調味料でもリノール酸の自動酸化を完全に抑制した。DPPHラジカル消去活性では、原料により差はみられるものの、約63-92%の活性を示した(普通小豆のみ:約63-74%;普通小豆+小麦:約79-88%;米のみ:約82-85%;米+小麦:約88-92%)。また、スーパーオキシドアニオンラジカルに対して約85-99%の消去活性を示し、なかには本ラジカルを完全に消去する調味料もあった。ヒドロキシルラジカル消去活性では、普通小豆のみならびに普通小豆+小麦の場合では最も高い活性を示したが、米を用いた場合でも比較的高い活性が検出された。市販醤油と比較して、いずれも高いアンギオテンシンI変換酵素阻害活性(約54-72%)を示すとともに、普通小豆を用いた場合では、仕込みに用いたエタノール濃度が高いほど高い抗アレルギー活性を示す傾向が認められた。これらの顕著に高い健康機能性には、原材料由来のペプチドやフェノール類の寄与が示唆された。以上より、市販醤油と比較して無塩醤油様調味料の健康機能性には優位性があると考えられた。一方、用いた主要な原材料(普通小豆、米、小麦玄麦)にはナトリウムはほとんど含まれておらず、これらの食塩相当量はゼロ(食品成分表「八訂」参照)である。現在の調製法では、無塩醤油様調味料の呈味、特に塩味の改善が難しいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、小仕込みした無塩醤油様調味料の品質検査を「しょうゆ分析法」に従って行なった。これにより、試醸した醤油様調味料は市販醤油に劣らない品質を有することを突き止めた。今年度は、調製した無塩醤油様調味料の健康機能性解析を行なった結果、高い抗酸化性や活性酸素種消去活性を示すことを明らかとした。さらに、アンギオテンシンI変換酵素阻害活性(血圧上昇抑制効果)ならびに抗アレルギー活性を有し、生活習慣病の予防に寄与する有用な機能性を示すことを解明した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って無塩醤油様調味料の呈味改善を試みた。しかしながら、現在までに市販醤油(または醤油様調味料)のような、美味な醤油様調味料の開発には至らなかった。主な原因は、明らかに塩味不足によるものと示唆された。消費者の健康志向の高まりや高齢化の急速な進展に伴い、塩分の過剰摂取によるリスクに対する意識が向上している。そのため、できるだけ塩分含量の低い醤油(または醤油様調味料)を選択する傾向は益々強まると考えられる。今後は、塩分がどれだけ含有すれば食味良好な醤油様調味料となりうるか検討を続けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
無縁醤油様調味料の呈味性の改善のために、更なる研究を行なう必要がある。
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