研究課題/領域番号 |
19K02292
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕紀子 茨城大学, 教育学部, 教授 (00272740)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 男性 / 育児休業 / エンパワメント / 家庭科 / 養育主体 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、令和元年度に実施した男性の子育てへの関わりに関する諸外国の研究レビューに加え、日本の育児休業制度や男性の育児への関わりを整理し、書籍として刊行した。欧米諸国の研究をレビューした結果、男性が子育て休業を取得するためには、高レベルの所得保障、給付を伴う長期の休業期間、父親をターゲットとしていること等の条件が必要であることが確認された。日本と欧米諸国を比較したところ、日本の育児休業制度は男性の育児休業取得率の高い諸外国と比較しても遜色ないことが確認できた。このことから、制度を整えるだけでなく、制度を機能させるための環境についての研究が必要であることが示唆された。また、研究レビューから、養育者としての男性のエンパワメントは、父親が単独かつ長期(3ヶ月以上)の子育て休業を取得した場合に促進されることも確認された。日本では単独で休業を取得する割合が少ないことから、単独取得を促すための方策や単独取得の男性を支える仕組みを考えていく必要が示唆された。 また、令和3年度は前年度に続き、新型コロナウィルス感染拡大が収束しなかったことから、聞き取り調査を一旦中断し、それまでに実施した育児休業を取得した男性への聞き取り調査の結果をふまえ、男性の育児への関わりを促す冊子を作成してその効果を検証する予備調査を実施した。今日の家族形成期にある男性は家庭科の男女共修世代であることをふまえると、男性の家事・子育てのスキルを補うためには、家庭科の視点から基本的な知識・技能を見直すことが有効な手立てであると考えられる。そこで、小・中学校、高等学校の家庭科の教科書を手掛かりに、子育て期にある男性の家事・子育て参加意識を高め支援する冊子を作成した。予備調査の結果からは、作成した冊子には子育てへの具体的なイメージを喚起し、父親としての自覚を芽生えさせる効果があることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度は、これまでに実施した聞き取り調査の結果を公表することを予定していた。しかし、コロナ禍が予想以上に長期化し聞き取り調査の数が予定した数に達しなかったことから、計画の見直しをはかり、諸外国の研究レビューをもとに日本の課題を整理しなおすとともに、これまでの聞き取り調査の結果をふまえ、教育方策としての教材を作成することにした。そのため、聞き取り調査の整理と公表は次年度に持ち越されることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、未実施分の聞き取り調査を実施するとともに、それらの結果を分析し、論文として公表する。また、令和3年度に作成した教材の効果を検証する。そして、これらの結果を家庭科教育につなげる取組について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は令和2年度に聞き取り調査を実施し、令和3年度にその成果を発表する予定であった。しかし、令和2年度は新型コロナの感染拡大とそれに伴う非常事態宣言の発出により、聞き取り調査が思うように進まず、学会発表や論文投稿などもできなかった。そのため、調査の実施と結果の整理に要する旅費と人件費、成果発表のための旅費および論文執筆・投稿に伴う経費が令和3年度に繰り越されることとなった。 令和3年度も新型コロナの感染拡大は収束しなかったため、研究計画の見直しをはかり、欧米諸国の研究レビューの成果を刊行するとともに、当初、調査の結果をふまえて行うことになっていた教育的方策の一環としての教材作成を先行して実施し、その成果について予備調査を実施した。そのため、令和3年度に使用するはずであった聞き取り調査実施のための費用や成果発表のための費用が令和4年度に繰り越されることとなった。 令和4年度は聞き取り調査を実施し、その結果を整理して論文として投稿するとともに、令和3年度に行った教材の検証を行う予定である。次年度の使用額は、上記の取組に必要となる経費として使用する。
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