大学生を含む若年成人は、今後を担う世代であるにも関わらず食生活上の問題が多い。野菜摂取量が少ない事もその1つである。大学生に対する食事介入の場の1つとして学生食堂があるが、自分で料理を選択するカフェテリア方式の学生食堂では、副菜を選択しない大学生が多いことが報告されている。そこで本研究では、カフェテリア方式の大学学生食堂において野菜料理の選択を増やすため、人間の行動心理を利用し、望ましい方向へ行動を導く「ナッジ(nudge)」の方法を取り入れた介入を実施し、その効果について検証することを目的とした。 研究2年目、3年目には兵庫県の1大学の学生食堂にて2種類のナッジ(野菜小鉢の販売数をリアルタイムで表示する掲示板、野菜摂取を促すデジタルサイネージ映像)を用いた介入を2週間ずつ実施した。今年度は神奈川県の1大学の学生食堂にて、令和4年12月~令和5年2月までの計7週間の間に、①全品100円で料理を購入できるイベントを実施、②食堂入口にある券売機の野菜サラダのボタンを目立たせるナッジの介入を行った。調査期間中は購入したメニューを把握するため、食堂責任者から日別の各料理の売り上げデータを提供してもらった。その結果、全期間における料理の平均売上食数は276食であった。イベント期間中の野菜サラダの平均選択率は全料理売上数の3%、野菜サラダのボタンを目立たせる期間中の野菜サラダの平均選択率は、全料理売上数の14.4%であった。以上のことから、学生食堂において野菜料理選択を増やすには、野菜料理の券売機にナッジの仕掛けを作ることが有効である可能性が示唆された。
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