研究実績の概要 |
これまでに我々は、DNAマイクロアレイ解析の結果から、鉄キレート剤であるDFO処理細胞ではタンパク質メチル基転移酵素であるPRMT1, PRMT3の遺伝子発現が低下することを明らかにしている。しかしながら、これまでに鉄欠乏状態とタンパク質のメチル化修飾との関係については報告がない。そこで本研究では、ラット肝臓由来細胞であるFAO細胞を用いて、鉄欠乏状態とメチル化修飾との関連を明らかにすることを目的とした。 まず、FAO細胞に2種類の鉄キレート剤DFOおよびdeferasirox (DFX)を24時間処理後、PRMT1, PRMT3遺伝子について定量的PCR法を用いた解析を行った。その結果、DNAマイクロアレイ解析と同様に鉄欠乏条件下で、いずれの遺伝子発現も減少した。続いて、鉄欠乏状態がPRMT1, PRMT3を介してタンパク質のメチル化を制御しているのか否かについてwestern blotによる解析を行った。その結果、PRMT1, PRMT3および総メチル化タンパク質の発現は、無処理群に比し鉄キレート剤(DFOおよびDFX)処理により減少した。次に、これらの減少が鉄欠乏によるものか否かを明らかにするために、DFOまたはDFX単独処理に対してholo-transferrin(50uM, 6時間処理)を添加する鉄レスキュー実験を行った。その結果、holo-transferrin添加はDFOおよびDFX処理によるPRMT1および総メチル化タンパク質の減少を抑制した。 以上により、鉄欠乏状態はメチオニン代謝を減弱させることに加え、タンパク質のメチル化を負に制御していることが明らかとなった。
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