研究課題/領域番号 |
19K02307
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
笹崎 綾野 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (60724010)
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研究分担者 |
見寺 貞子 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (10268576)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 円背 / 高齢女性 / 体型特性 / 衣服 |
研究実績の概要 |
本研究は、加齢や疾病により体型特性がみられる円背高齢女性に対し、機能と美観に配慮した衣服製作ガイドラインを提示する実践的研究である。円背高齢女性は、既製服が体型に合わないなど衣生活に問題を抱えており、その要因は背面形状の変形と姿勢の傾きにある。円背高齢女性の衣服製作では、その体型特性に視点を置き、機能と美観を両立させる衣服製作法を確立する必要がある。そこで、円背高齢女性に適合した衣服デザインの構築を目的とし、衣服デザインに係る体型特性の把握およびその分類、さらに各々の体型特性に合った衣服デザインを提示する。また、「人体計測」「体型特性把握および分類」「衣服デザイン・設計・製作」「着用評価」「衣服製作ガイドライン」までの一連の過程を示すことで、衣服デザイン(機能と美観)に主眼をおいた実践的研究法を確立する。 本研究計画は、「①衣服生活意識」「②人体計測」「③写真撮影」「④円背の体型特性の把握および特性分類」「⑤円背体型特性に適合した衣服原型の構築およびデザインの選定評価」「⑥衣服製作ガイドラインの構築(総括)」であり、2021年までに、①~⑤の調査を実施し、それらのデータを基に、「④円背の体型特性の把握および特性分類」を行った。①では、兵庫県内在住の円背高齢女性を対象とし、アンケートおよびヒアリング調査を実施した。②では、マルチン計測、三次元計測を実施した。③では、前方・後方・右側面・左側面の被験者写真を撮影した。④では、円背の体型特性を明らかにするため、衣服専門家による「視覚評価による体型分析調査」を実施した。⑤では、体型特性に適合した衣服原型の検討までを実施した。2022年は、⑤の内容をまとめた上で、⑥にて「円背高齢女性衣服製作法のガイドライン」の提示およびその理論に至った一連の過程を成果として示し、アパレル企業や教育分野等で活用できる円背高齢女性衣服製作理論を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年は、「①衣服生活意識」「②人体計測」「③写真撮影」を実施し、それらの調査を基に、「④円背の体型特性の把握および特性分類」を行った。「①衣服生活意識」では、兵庫県内在住の円背高齢女性を対象とし、アンケートおよびヒアリング調査を実施した。「②人体計測」では、マルチン計測、三次元計測を実施した。マルチン計測は、衣服設計に必要な基本項目に加え、背面(特に、肩甲骨周辺)の体型特性を把握できる新たな計測項目を設定し、実施した。三次元計測は、スペースビジョンの3D BODY SCANNERを用い、マルチン計測法と同様の被験者に対し実施した。「③写真撮影」では、デジタルカメラを距離230cm、高さ98㎝の位置に三脚で固定し、前方・後方・右側面・左側面の被験者写真を撮影した。①②③は被験者に同意を得た上で実施した。「④円背の体型特性の把握および特性分類」では、「円背」の体型特性を明らかにするため、衣服専門家による「視覚評価による体型分析調査」を実施した。女性高齢者72名の「③写真撮影」を観察し、首、肩、体幹の姿勢、背中の形状、膝、衣服補正の必要度について7段階で評価し、データを集計した。 2020年~2021年は、「④円背の体型特性の把握および特性分類」の分析分類および「⑤円背体型特性に適合した衣服原型の構築およびデザインの選定評価」を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、高齢被験者への調査依頼が困難であった為、⑤の衣服原型構築およびデザインの選定評価の部分が実施できなかった。2022年には、「⑥衣服製作ガイドラインの構築(総括)」にて「円背高齢女性衣服製作法のガイドライン」の提示およびその理論に至った一連の過程を成果として示し、アパレル企業や教育分野等で活用できる円背高齢女性衣服製作理論を構築する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年は、2020年から引き続き、「④円背の体型特性の把握および特性分類」の分析分類および「⑤円背体型特性に適合した衣服原型の構築およびデザインの選定評価」を実施する予定であった。④については、体型特性の度合いをグレード(段階)に分類し、各グレードの被験者について衣服原型およびデザインを提示する予定であったが、円背の体型分類には、姿勢の要素を含める必要があることが明らかとなり、分析方法を再考した。⑤については、新型コロナウイルス感染症の影響で、高齢被験者への調査依頼が困難であっ た為、実施できなかった。 そこで、2022年は、再考した④の分析をまとめた上で、「⑤円背体型特性に適合した衣服原型の構築およびデザインの選定評価」を実施する。⑤の評価については、④にて分類した被験者について、衣服着用時の問題点を明確にし、衣服原型およびデザインを提示する方法で進める。各被験者に適合した衣服原型を設計し、原型を基にした各基本アイテムについて「機能(着心地)」と「美観(似合う)」の両面から調査する。「機能(着心地)」では、各被験者に対し、衣服の基本アイテムを製作し、立位時・動作時・歩行時について衣服形態および着心地に問題はないか主観および客観評価にて判定する。「美観(似合う)」では、「機能(着心地)」と同様の方法で評価を行うが、評価内容を嗜好に特化したものとする。各グレード被験者に対する衣服デザインに必要な基本要素をまとめ、最終的に基本要素からのデザインバリエーション提案を行う。 さらに、本来2021年に実施予定であった「⑥衣服製作ガイドラインの構築(総括)」を実施する。①②の調査資料を基にした③④⑤の内容をまとめ、円背高齢女性のガイドラインを提示する。2022年も新型コロナウイルス感染症の影響が続くと考えられる為、⑤については、社会状況を鑑みて慎重に実施を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年の助成金の内、「旅費」「人件費・謝金」について、予定額を執行できなった。 「旅費」「人件費・謝金」については、新型コロナウイルス感染症の影響で予定していた「⑤円背体型特性に適合した衣服原型の構築およびデザインの選定評価」の調査が実施できなかった為、予定通りに予算を執行しなかった。「旅費」「人件費・謝金」は、2022年度に持ち越す。その他、⑤の調査に係る「研究生地のサンプル一式」について、衣服デザインのため必要と判断し、予算を執行した。
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