研究課題/領域番号 |
19K02309
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研究機関 | 尚絅大学短期大学部 |
研究代表者 |
本田 順子 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 講師 (90713230)
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研究分担者 |
原田 香 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 助教 (00782848)
相良 剛史 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60353132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高機能加工食品 / 嚥下食 / 低栄養 / フレイル / QOL |
研究実績の概要 |
高齢者の低栄養状態改善および老人性疾患予防に資するため、食品加工残渣などの開発途上資源に見出されている機能性成分を有効活用し、嗜好性を加味した加工食品の開発を目指して研究を行っている。今年度は、食品加工残渣の中でも排出量が多く容易に入手できる米糠に着目し、その有用性を確認するべく、品種の異なる玄米由来の米糠に含まれる一般成分の測定や抗酸化作用の確認、ポリフェノール含有量の測定等を行った。現在、高齢者の低アルブミン血症改善に寄与する必須アミノ酸の定量や認知症予防効果が期待できる各種酵素阻害活性についても検討を行っている。 一方、主食への栄養素および機能性成分の介入は、必要量の有効成分を継続的に摂取しやすいものと考えられるため、食品加工残渣を添加した主食となり得る加工食品の製造方法に関する検討を行っており、今年度は、無農薬の米糠を添加した嗜好性の高いパンの開発に取り組んだ結果、米糠の添加割合を30%まで高めることに成功した。米糠が有する機能性は、調理加工の過程において損失または増強する可能性があることから、開発に成功した米糠添加パンを用いて、その機能性を検討する予定である。他方、嚥下困難者の多くは要介護者であることから、介護者が容易に調理加工できる「家庭でできるやわらかいパンの調理」と「炊飯器を用いたやわらかい米飯」の2つの高機能嚥下食調理法を検討した。「やわらかいパンの調理」では、米糠を添加したパンを乾燥粉砕化したものにゲル化剤を調合し、水分を添加することにより嚥下しやすい食感に復元できるかを確認するため、それらの比率などの検討を行っている。「やわらかい米飯の調理」では、自身の先行研究の結果をもとに米糠添加量の検討を行い、精白米100 gあたり3.3 gの米糠添加で良好な炊飯状態を得ることができた。今後、米糠の粒度と炊飯時の添加率の関係を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食品加工残渣である米糠を高濃度に添加した嗜好性の高いパンの開発に成功しており、その成果を他の開発途上資源に応用することが可能であるため、研究の進展が期待できる。 また、食品加工残渣を添加した加工食品に含まれるや成分分析や機能性解析、物性測定などを行う準備も整っており、研究はおおむね順調に進展しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
米糠および米糠添加パンに含まれる有用成分の検討では、高齢者の低アルブミン血症改善等に寄与する成分の確認や機能性の解析を行うとともに、機能性成分の消長を加味して加工法の改善を行う。高機能嚥下食調理法に関しては、「米糠を添加したやわらかい米飯」において、微粉砕した米糠の粒度と炊飯時の添加率との関係を明らかにし、通常の玄米以上の栄養成分(10%以上の米糠添加)を有し、かつ消化性が高まる調理加工を検討したい。また、米糠を添加して調理加工を行ったパンや米飯の物性測定および官能評価を実施するとともに、米糠以外の有望な食品加工残渣の利用やパンや米飯以外の加工品に関しても検討を加えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、食品加工残渣に含まれる機能性成分の分析等を行った後に、それらを添加した調理加工法の検討を行う予定であったが、調理加工後の食品においても同様の分析が必要となることから、自身の先行研究結果や文献値を元にある程度調理加工法を開発した後に、まとめて分析を行うことにした。そのため、分析費用等の経費を次年度以降に使用することにした。
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備考 |
(熊本市産業振興課主催のセミナー)第69回産学マッチングイベント・ラウンドテーブル 「主食で栄養状態を維持することは可能か。高齢者のQOLを高める加工食品の創出」
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