研究課題/領域番号 |
19K02311
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
君塚 道史 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (90553446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 氷結晶 |
研究実績の概要 |
食品の冷凍保存時に生じる様々な品質(香り、色、栄養成分)の変化は産業上重要な課題となっている。現状ではこれらの課題に対し、凍結完了までの冷却速度や保存温度の低下によって対処的な改善が成されている。しかしながら、昨今のエネルギー問題を鑑みるにエネルギーの過剰投入となるこれらの方法は最善とは言えず、その効果についても同様には得られていない。即ち、凍結保存条件が冷凍保存時の品質変化に及ぼす影響について十分な解釈が成されているとは言い難い。本年度は、キャベツ、ブロッコリー、ほうれん草を対象として、凍結速度、ブランチング処理および脱酸素剤の有無などの条件を変えて凍結保存した場合の保存温度(-10~-60℃)と品質変化(アスコルビン酸量,褐変)の関係について検討した。その結果、各保存温度でアスコルビン酸の減少速度定数を比較すると、キャベツとブロッコリーは同程度であるが、ホウレン草についてはこれらと比べ低く、冷凍保存時の劣化は少ないことがわかった。一方、アスコルビン酸の減少速度定数をアレニウスプロットすると、品種、凍結速度、ブランチング処理および脱酸素剤の有無を問わず保存温度-30℃を境に活性化エネルギーは変化する事がわかった。更に凍結速度の遅速は保存後のアスコルビン酸の残存に殆ど影響しないが、加熱処理や脱酸素を行うと速度定数は低下する事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青果物を種々の温度で凍結保存した結果、品種、冷却条件など種々の条件を問わず、何れの場合も保存温度-30℃を境に品質変化(アスコルビン酸量,褐変)は抑制される傾向にある事を明らかにした。よって、研究全体の進捗状況としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
保存試料としてモデル加工食品(小麦粉ドウ)を対象とした保存試験を今年度と同様に行う。品質劣化指標としては力学物性値など、既知の測定方法を用いる。さらに凍結保存時における品質劣化のメカニズムを明かにする為、昨年度および次年度の保存試験結果から得られた速度定数や活性化エネルギーに対して、凍結濃縮相内の濃度および状態から統一的な解釈を試みる。
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