食品の冷凍保存時に生じる様々な品質変化の抑制は重要な課題となっている。現状ではこれらの課題に対し、凍結完了までの冷却速度や保存温度の低下によって対処的な改善が成されている。しかしながら、昨今のエネルギー問題を鑑みるにエネルギーの過剰投入となるこれらの方法は最善とは言えず、またその効果についても十分な解釈が成されているとは言い難い。本研究では、これまでに行ったモデル食品の保存試験結果から、冷凍保存時の品質劣化は凍結条件(冷却速度)に比べ、保存条件(保存温度)の影響を強くうけることを明らかにした。これについては凍結および保存条件により凍結濃縮相の濃度が変化し、冷凍保存後の品質に影響していると考えられるが、詳細な実験は行われていない。そこで本年度は、凍結速度が異なるミオグロビン水溶液のメト化速度と保存温度が変化する場合の氷結晶の粗大化速度の変化から凍結濃縮相の濃度変化と凍結保存時における品質劣化の関係について間接的に考察を行った。その結果、ミオグロビン水溶液のメト化については保存温度の影響を強く受けるが、保存温度が同じであれば凍結速度が大きい方がメト化速度は小さい事がわかった。また、保存温度が変動する場合の粗大化については低温側に温度が振れる場合であっても、粗大化は促進される傾向にある事が示唆された。以上の結果は冷却および保存条件により氷結晶サイズが変化することで氷結晶周辺における凍結濃縮相の濃度または濃度分布が変化し、これに伴い食品の品質が変化していることを示唆している。
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