研究課題/領域番号 |
19K02313
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
西川 陽子 茨城大学, 教育学部, 教授 (60303004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SDGs / ESD / 食文化 / 食教育 |
研究実績の概要 |
2017年度に食育基本法がスタートして10年余りが経ち、栄養教育に関しては格段に進み、食教育として次に取り組むべき課題は食のSDGs(食資源を次世代に継ぐ意識を育む教育(食におけるESD))であると考えられる。本研究は、食教育へのESD導入促進を目的とし、その教育の重要性について教育実践による数値データに基づき提言するとともに実用的な教育手法を模索することを目的としており、研究は、「A:食文化を題材とする教材開発と教育方法の検討」と、Aの開発教材を用いた教育実践研究の「B: 教科横断的教育要素の取り入れ方の追究」の2つの柱から成る。 Aの教材開発研究においては、これまで伝統的食品保存手段が栄養学的に優れていることの証明(2020年度論文)や、食品廃棄を極力抑える伝統的調理手法(大根の皮など廃棄部位の利用)の栄養学的有用性の証明(2021年度論文))をし、2021年度はこれらデータの提示教材化の検討と、更なるデータの蓄積(家庭での野菜廃棄部位を利用した再生栽培の可能性(2022年度論文投稿予定))を行った。また、検討した提示教材を用いた教育実践(Bの研究の柱に相当)を実施する予定であったが、昨年度に引き続きCOVID-19の影響により実施できなかった。一方、昨年度からBの教育実践研究が進められなかった場合の代替として準備していた米粉を教材とした食のSDGs教育に関するアンケート調査研究を進めることができた。具体には、水戸市と茨城県下の高等学校の協力を得て、米麺(米粉100%使用した茨城県内農家らが開発したパスタ)を教育題材とし、これと読み物資料教材の提供により、小麦粉代替用米粉の開発と食料自給率アップの関係、更に食料生産と消費のズレが及ぼす環境負荷に関する理解が可能か検討し知見を得ることができ、これら結果の一部を2021年度論文において公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の2本の柱(「A:食文化を題材とする教材開発と教育方法の検討」「B: Aの開発教材を用いた教育実践による教科横断的教育要素の取り入れ方の追究」)のうち、Aの教材開発については、伝統的食品加工手法に関する分析研究によるデータ蓄積を順調に進め、それらの提示教材化の検討を予定通り進めることができた。研究の柱BのAで開発した教材を用いた教育実践研究については、昨年度に引き続きCOVID-19の影響で進めることができなかった。2021年度は全研究期間(4年間)の3年目に当たり、Bの教育実践による結果を出し、その結果に基づき研究最終年度となる2022年度の開発教材のブラッシュアップにつなげる予定であったが、計画に照らし合わせると約1年の遅れが出ているものと考えられる。COVID-19の現状から考えて2022年度においては教育実践研究に着手できることが期待できることから、当初研究到達点として目指していた結果を得ることを重視し、研究期間の1年延長を視野に入れて研究のリスケジュールを検討したいと考えている。 一方、Bの教育実践研究の代替として2020年度より準備を進めた米粉を教育題材とした調査研究については、食のSDGs教育の重要性及び社会科と家庭科の教科横断的教育の必要性を示唆する結果を得ることができた。これら結果については、研究目的としていた食教育におけるESD導入の必要性を示すデータとなり得るもので、今後の教育実践研究における効果的な教育手法の検討において活用可能であると考えられた。 以上のことを総合的に評価して、研究進捗状況は「やや遅れている」が適当であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初予定の研究最終年度に相当するが、COVID-19による研究の遅延から、研究期間を1年延長し、今後2年間で研究成果を出す方向で研究のリスケジュールをすることを考えている。 研究の柱Aの教材開発においてはこれまで蓄積してきた分析研究結果を生かして、教育実践研究に用いることができるところまで精度を高め、2022年度は教育実践に用い、2023年度にかけて教育実践結果と往還しながら教材のブラッシュアップを図り教材を完成させていくことを目指す。 研究の柱Bの教育実践研究については、2022年度ではAの開発教材を用いて高校生もしくは大学生を対象に実施し、適切な教育実践研究の方法(データのとり方等)を確定し、2023年度においてはブラッシュアップされた開発教材を用いて、食のSDGs教育の重要性及び必要性についてデータ収集を行い結果をまとめていくことを予定している。なお、2022年度における実践教育研究の方法検討においては、今年度の米粉を題材とした調査研究で得られた結果を生かし進めていくことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度と同様、2021年度も2つの研究の柱のうち研究の柱Bに相当する「開発教材を用いた教育実践研究」について、COVID-19の影響により計画していた食味実験等を含む大学生、高校生を対象とした教育実践研究を実施することができなかった。また、研究の柱Aの教材開発研究においてもBの研究と往還した教材のブラッシュアップにおいて遅れが生じている。研究全体として、当初の研究計画の約1年遅れとなっており、研究期間の1年延長(研究終了を2022年度→2023年度に延長)を考えている。COVID-19の現状から、2022年度以降は教育実践研究がある程度進められるものと考えられ、予定していた研究内容は研究期間を1年延長することで十分実施可能と見込んでおり、未使用分の研究費については1年遅れで予定通り使用することを計画している。
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