本研究は、「食文化」を題材に自身の食生活が与える環境負荷について理解する食教育の可能性を模索することを目的とするもので、研究は、「A:食文化を題材とする教材開発と教育方法の検討」と、Aの開発教材を用いた教育実践研究「B: 教科横断的教育要素の取り入れ方の追究」の2つの柱により推進を図ってきた。 Aの教材開発においては、伝統的食品保存手法(乾燥、塩蔵、発酵など)が冷凍冷蔵保存には及ばないものの栄養学的に優れた食品保存方法であることを明らかにし、それら実験データを活用した伝統的食文化の継承の必要性と食のSDGsのために自身の食生活がどうあるべきかといったことを考えられる教材の開発が順調に進められたが、COVID-19によりBのこれら開発教材を用いた教育実践研究については実行できずにいた。予定していた研究期間最終年度の2022年度の段階でCOVID-19において収束の兆しがあり教育実践の可能性があると判断されたため、今年度研究期間を1年延長して高校生を対象にBの開発教材を用いた教育実践研究を実施することができた。結果として食生活におけるSDGsを考えるための題材として食文化教育を活用することは有効であることを示唆する結果が得られた。この結果については今後論文としてまとめる予定であり、適切な食文化教育のあり方について発信するとともに、食のSDGsを考えるための教育の更なる追究に本結果が活用可能であると考えられた。 一方、Bの教育実践研究ができなかった場合の対応として、食のサステナビリティ教育教材開発として米粉パンの可能性を追究する研究を行っていたが、米粉パンの需要拡大に向けて自身で製パンするのを目指すのではなく市販のものの利用を主として推進するのが適当であることを示唆する結果が得られ、これについては今年度論文としてまとめ投稿することができた。
|