研究課題/領域番号 |
19K02314
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
南 道子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70272432)
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研究分担者 |
櫛山 暁史 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (30435820)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 食物繊維 / 健康寿命 / アンケート調査 / 動物実験 / 血液生化学分析 |
研究実績の概要 |
食物繊維は、腸内細菌叢を変化させ生体にとって、有益な影響をもたらす事が生化学的な知見や分子生物学的な知見を得る研究がされており、本研究の前段階でも、肝臓の脂質合成遺伝子に変化をもたらす事を発見している。しかし、動物実験で食物繊維単体投与飼料の飼育では、その食物繊維のみの働きを見出しているが、実際の食生活では食物繊維単体で多量に摂取する事はなく、食物繊維であるセルロースやペクチンを含む野菜や果物の形で摂取している。 それに伴いビタミンやミネラル類も摂取を増加させるので、野菜不足がもたらす健康被害や果物の機能を検討するには、食物繊維単体の欠乏・投与での動物実験がされるのは適していないと考えた。研究の実施計画では、食物繊維の働きを考える上で、詳細な論文検索を行うとともに、アンケート調査の内容として、若年層である大学生を対象に野菜摂取の状況を調査して状況把握をした後、それをもとに動物実験を行うという計画であった。 食物繊維の論文についての検索は、J-STAGEの全文検索において、文献の総数はそれぞれ食物繊維と「腸内環境」896編、「整腸作用」532編、「プロバイオティクス」1030編であった。食物繊維と「腸内環境」と「整腸作用」で、OR検索を行ったのち、AND検索を行った。AND検索であるいずれも含まれている文献は97編であった。食物繊維と「腸内環境」と「プロバイオティクス」のいずれも含まれている文献は155編であった。食物繊維と「整腸作用」と「プロバイオティクス」いずれも含まれている文献は117編であった。食物繊維と「腸内環境」「整腸作用」「プロバイオティクス」の3つの言葉のうちいずれかを含んでいる文献は2074編で、食物繊維と2つ以上含んでいる文献は384編であった。 以上の中で、本研究に関与する健康寿命を延伸する要素である、体内の炎症を抑える機能を検討した論文を精査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、COVID-19の流行により、共同研究先での動物実験が事実上実施できないことだったので、運動の強度と食事摂取の状況の相関をアンケート調査により検討を行った。 朝食、昼食、夕食の提供形態について、内食(自炊)・内食(他から提供)・中食・外食・なしの5つに分類し、1週間の計21食の平均頻度を数字で記入する。運動習慣を強・中・弱で記入し、運動部の在籍の有無とジム等の利用の有無を記入し、有の場合1日の時間数、週あたりの頻度、活動内容を記入する。授業前日の三食の食事について、料理名・食品名・食品を6つの基礎食品群(1群:魚・肉・卵・大豆・大豆製品、2群:牛乳・乳製品・小魚・海藻、3群:緑黄色野菜、4群:淡色野菜・果物、5群:穀類・芋類・糖分、6群:油脂類・多脂肪食品)に分類し、量を記入する。摂取量については、記入前におおよその食品のg数の説明を行い、グラム表記の基準として、こぶし大・手のひらの大きさ、個数等で記入することとした。それを食品ごとにgに換算して、栄養分析ツールである栄養君で解析した。 自宅と下宿を比べると、朝食欠食の学生はやはり下宿生に多いが、自宅で自炊して朝食を整える学生は下宿生より多く、下宿生は自炊よりも何か買ったものを下宿で食べるという例が自炊の2倍ほであった。夕飯は下宿生は家で作るが、自宅生は内食が多く、下宿生の5倍ほど存在した。大学生になると母親の作ってくれたものを食べるというよりは、昼食の学食や夕飯の外食ですませ、下宿で自炊している学生よりも、自宅生の方が外部に依存している実態が得られた。 運動強度と自炊率を調べると、どこにも所属していない学生<サークルの学生<部活に所属している学生の自炊率が高かった。運動強度が高いことで摂取カロリー数が多くなり、単に食品摂取の数が多いだけでなく、魚の摂取や野菜の摂取も多くなり、栄養バランスの点でも優れていると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、COVID-19の流行下で、動物実験ができなかったことから、平成30年度に申請した内容を大幅に変更せざるを得なかった。今年度も、その続きで明治薬科大学の動物実験施設の再開を待ってからの実施となる。 昨年度と一昨年度の高校生や大学生へのアンケートでは、前日に食べた食事の調理品名と食品名を記載してもらい、大体の量を明記してもらって栄養計算ソフトである『栄養君』で分析した。総数が約900人分の食事内容は洋食過多でコンビニや外食の食事が多いことから、塩分や脂質、糖分が多い食事内容となっている。特に野菜や果物が少ない結果となった。また、下宿生では果物を食べておらず、ビタミンCの大幅な摂取不足が考えられた。 食事分析の結果では、それを反映して食物繊維、ビタミンA, ビタミンD, カルシウム、食事摂取基準の約5割前後であったことから、それらの栄養素を減じた食餌を作成する事が考えられる。また、洋食過多であることから、脂質の摂取が多いこと、タンパク質の摂取も多い。 動物実験に用いる餌は、業者から栄養素別に購入し、コントロール群とアンケート調査の栄養計算により出された結果の群を作り、更にそれに食物繊維、もしくは実際の食品である野菜を摂取した場合を想定して餌を作る必要がある。野菜を想定する場合は、ビタミン類の上乗せについて検討する必要があるが、それらは今後検討する。それらを幼若マウスに摂取させて飼育するが、論文の検索結果をもとに飼育期間を検討する。現状では、飼育施設の状況を考慮しなければならないので、1~2ヶ月間と考える。 その後、解剖をしたのち血中の生化学分析はバイオラッドの中央研究所で、サイトカイン分析かアディポカイン分析かの選択を行い結果については、臓器のそれらに関与するタンパク質の発現と合わせて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19の蔓延による動物実験遅延のため、データ解析やまとめの期間を後ろにずらす事が必要になったため、次年度使用が必要になった。 次年度の使用額は、解剖をしたマウスの臓器の生化学分析、分子生物学的な解析費用として使用する。
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