本研究課題により、HAP1は、脳や脊髄以外の胃幽門腺細胞や消化管における腸管神経系の筋層間神経叢に豊富に発現していることを明らかにしてきた。一方、腸管粘膜下神経叢におけるHAP1の発現分布やどの細胞群に発現しているかは不明である。 本年度は、マウスおよびラットの小腸粘膜下神経叢におけるHAP1の発現分布と神経化学的特性を明らかにすることを目的とした。その結果、HAP1は、成体マウスおよびラットの粘膜下神経叢で、共に高い発現を示すことが明らかとなった。HAP1免疫陽性粘膜下ニューロンの割合は、成体マウスおよびラットの腸管において有意な差はみられなかった。コリン作動性分泌運動ニューロンマーカーおよび、非コリン作動性分泌運動ニューロンマーカーを用いて蛍光二重免疫染色法を行った結果、これらのほぼすべてがHAP1と共局在していた。更に、血管拡張ニューロンマーカーにおいても、ほぼすべてがHAP1と共局在を示した。 本年度は、STB/HAP1が粘膜下神経叢の分泌運動ニューロンおよび血管拡張ニューロンに発現していることを明らかにした。STB/HAP1は、腸管神経系の粘膜下ニューロンの分泌運動および血管拡張機能を調節または保護する新たな可能性が示唆された。
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