フィリピン共和国(以下、フィリピン)では、貧困ゆえの栄養・健康格差が深刻な問題となっている。特に5歳未満の幼児は低栄養による衰弱が深刻で約 30.3 %が発育不良の状態にある。このことから、Daycare center では、発育不良、消耗症、低体重の幼児に対し、Feeding program を実施している。Feeding programでは、栄養補助を目的に、KALINGA(米、緑豆、ゴマの混合物)を使用した補食の提供が推奨されているが、その主成分は、炭水化物とタンパク質であり、摂取による体重増加は期待できるものの、ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素の含有量は乏しく、補食として用いるためには不足栄養素を考慮した、調理・加工法の検討が必要となる。 そこで、本研究では、フィリピンの幼児を対象とした食事調査を実施し、食生活の問題点を抽出すると共に、不足栄養素の供給源として、Moringa oleifera を用いたサイクルメニューの立案と加工食品(クッキーとポルボロン)の作成を行い、その品質と嗜好性を評価した。さらに、Feeding program で活用できる栄養教育媒体(英語版)の動画とリーフレットの作成を行った。 フィリピンでは、Covid-19の影響で長らくFeeding program を中断していた施設が多く、当初の計画どおりに現地調査が実施できなかったが、最終年度は、Feeding program を再開したCebu島のElementary school を訪問し、Covid-19以降のFeeding program の実施状況と、幼児、児童を対象に食生活の実態調査を行った。
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