研究課題/領域番号 |
19K02334
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
宮野 道雄 大阪市立大学, 生活科学研究科, 学長補佐 (00183640)
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研究分担者 |
小田 義也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (30336523)
生田 英輔 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (50419678)
荏本 孝久 神奈川大学, 工学部, 教授 (90112995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地区防災計画 / 被災度調査 / 木造家屋 / 地盤振動 / 地震危険度評価 / 表層地盤リスク / 微動計 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで一般的に行われてきた地震時の地域危険度評価(被害予測)に基づく地域防災計画立案の課題を克服し、よりきめの細かい「地区防災計画」の策定や住宅の耐震改修の実施判断に資する新たな手法の提案を目指している。すなわち、表層地盤の振動特性を簡易な手法で計測して、木造住宅の家屋単位で被害を予測する手法を開発する。成果の特長は、研究組織メンバーが有する過去の地震災害での木造家屋被害調査結果と地盤振動特性評価技術とを併せて活用することで、簡易で実証的な評価システムが得られるところにある。 研究二年目の今年度は、本研究で対象とする1974年伊豆半島沖地震および兵庫県南部地震のうち、前者では表層直下に基盤を有し、地表に現れた断層の上盤側に顕著な住宅被害を蒙った石廊崎地区、集落を流れる2本の小河川沿いに住宅が分布し、河口の軟弱地盤上の住宅が大きな被害を受けた子浦地区、集落の主要部が厚い砂質盛り土から成り、しかも集落直下を断層が通ったことにより、大きな住宅被害が広い範囲に拡散した入間地区というそれぞれ地盤条件の異なる地盤振動特性評価を行った。また、兵庫県南部地震については、同地震でもとくに被害が大きかった神戸市東灘区の一部の地区で、いわゆる「震災の帯」と呼ばれた震度7のエリアを含み、南北の地盤の変化の影響を検討しやすい地域を対象として、上記と同様の地盤振動特性評価を行った。 地盤振動特性評価のための常時微動観測は、微動計1台を用いて10分間の観測を行う単点観測と、微動計6台を用いて15分間の観測を行うアレイ観測の両方を併用して行った。伊豆半島沖地震被災地での計測結果によれば、断層活動の影響が大きいと考えられる石廊崎と地盤特性の影響が考えられる入間地区では性状が異なった。また、兵庫県南部地震の東灘区では地下構造の不規則性など局所的な影響を考察する必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目:研究担当者全員が参加する研究会を2回開催した。1回目では研究期間3年間の概略的なスケジュールと各自の分担を決定した。その後、本研究の対象地区の一つである熊本県益城町において地盤振動の予備的測定を行った。そこでは、測定方法の試行を行い、本測定での方法の確定に資することとした。益城町での予備調査実施後、第2回研究会を全員参加で行い、益城町での予備調査結果に基づき、計測時間やデータのまとめ方に関する検討の他、研究分担者による他の地域での計測結果との比較も含めて意見交換が行われた。さらに2年目の調査日程の概略を決定した。 2年目:新型コロナウイルス感染症拡大のため実施方法については慎重を期して対策を行った上で、当初の予定通り予備調査を行った熊本地震被災地の益城町以外の兵庫県南部地震の対象地区である神戸市東灘区を令和2年8月に、また同年9月には伊豆半島沖地震の対象地区である石廊崎地区、子浦地区、入間地区において地盤の微動観測を実施した。さらに、伊豆及び神戸での現地調査の折には第3回、第4回研究会を実施し、それぞれにおける計測結果概要についての意見交換と研究3年目に向けての検討を行った。 3年目については新型コロナウイルス感染症拡大の影響を読みにくい面があるが、予定通り益城町での本格調査を行い、最終的に3地震5地区での計測結果をまとめて、地震時の木造家屋振動被害と地盤振動特性との関係整理から、簡易な木造家屋振動被害危険度評価手法の確立を目指すこととした。 以上から、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は若干あるものの、本研究申請時の予定にしたがって進んでいるため区分(2)を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目の昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため、年度当初の計画通り5月に神戸で行う予定だった第3回研究会は中止としたが、伊豆と神戸での常時微動測定時に第3回、第4回として研究会を実施できた。その結果、これも見込んでいたとおり益城町での本格調査は3年目に実施することとした。 したがって、今後の研究の推進方策としては、最終年度にあたる3年目には熊本地震被災地である益城町における地盤振動特性の本格調査実施をまず行い、その結果整理を受けて第5回研究会を実施して研究全体の成果を明らかにする。 すなわち、神奈川大学チームおよび首都大学(東京都立大学)チームが主体となって地盤振動計測とそのデータ整理を行い、大阪市立大学チームは地震時の木造家屋被災度調査の実績に基づいて被災度との関りから地盤振動計測場所の選定を行う。 なお、昨年度の研究成果は最終報告を待たずに学会大会などにおいて随時報告していくこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、熊本県益城町での地盤振動本格調査を最終年度に先送りしたことや予定していた神戸での研究会の実施を中止したことにより、旅費の残額が生じた。最終年度の2021年度に益城町での本格調査を行うこと、および今年度の調査結果によっては若干の追加調査を行うなどして旅費の有効活用を行う予定である。 また、国際学会への投稿、参加ができなかったが、最終年度に実現する。
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