研究課題/領域番号 |
19K02337
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
山本 高美 和洋女子大学, 家政学部, 准教授 (10327182)
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研究分担者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 3Dディスタンスフィールド / ボリュームモデル / アパレルアイテム / 3D人体計測 / 被服構成学 |
研究実績の概要 |
2年目である本年度は,3D 計測によって採取した人体表面のポリゴンモデルをボリュームモデルへ変換し,個別型トルソーを開発するとともに,密着衣料デザインへの応用を試みた.人体のボリュームモデルを用いて,洋服の身体補正機能・パターン作成(右半身で実施)のために,個別型トルソーを開発する. 本トルソーのディジタルデータは,ボリューム処理を介して,人体の対称軸を決定し左右対称化するとともに,3Dスキャナの計測誤差,衣服のしわなどによる微妙な凸凹を平滑化した.研究協力者20名のデータを用いて3Dスキャンしたモデルと,ポリゴンのしきい値0.3~0.7(内部は1,外部を0)のトルソーを作成し比較検討を行った結果,しきい値0.4が3Dスキャンモデルと一番近いことが証明された.しきい値0.4の形状データは,比較的安価な発泡スチロール切削加工によって3Dプリントし,樹脂による表面を硬化し保護する塗装を施した.本トルソーを用いて,身体に密着したドレスを製作して試着した結果,体型にフィットしたことから本トルソーの有効性が示された. 次段階として,3Dスキャンで取得した人体のポリゴンモデルから,3Dディスタンスフィールドを構築し,レディスの身頃原型を作成した.ポリゴンのしきい値を変化させることで,適度なゆとりのある服の曲面を生成する.その曲面上にデザイン線を書き,2Dパターンに展開して身頃原型を作成した.2Dのパターン展開は,ポリゴンモデルの三角形を分割面に沿って切り分け,平面化した.パターンを縫製し,試着して検討を行った結果,適度なゆとりのあるレディスの身頃原型の開発ができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,3D計測によって採取した人体表面のポリゴンモデルを用いて,未来型オートクチュールの密着衣料を主とするアパレルアイテムの設計を行った.ポリゴンモデルのままでは,細かな形状の微調整が難しいため,ボリュームモデルを経由し,個別型のトルソーを開発する.まず,1/2のトルソーを作成しそのフローを確認した上で,1/1トルソーを開発した.1/1トルソー制作にあたり,研究協力者20名の3D計測データを用いて分析を行った.その中から標準体型に近い1名を選択し,人体の中心軸を修正し,左右対称である個別型トルソーを開発した.出力は,発泡スチロール切削加工により3Dプリントし,スチロール樹脂による加工を行った.その個別型トルソーを用いて,タイトフィッティング,身体に密着したドレスをデザインして,立体裁断によりパターン作成,縫製を行い,フィット感を確認できた. 次に,作成したトルソーを用いて,3Dディスタンスフィールドにより,体表面から一定の距離を保つ曲面(等値面)を自由に定義できるため,ゆとりを厳密に定義した服を生成した.しきい値を変更することで,人体を痩せさせたり太らせたりすることが容易となる.そこで,3Dスキャナと同形状のしきい値0.4の等値面から,身頃原型を作成するために,しきい値0.3のトルソーを生成した.ポリゴンモデルに,前・後中心,プリンセスラインを入れ,さらに,プリンセスラインと脇の間にもう1本デザイン線を入れた. 次に,衿ぐり線,袖ぐり線を入れた.デザイン線で切り分けたポリゴンは,3次元であるため,これを2次元に変換する.ポリゴンを構成する三角形の各辺をバネ化し,伸縮できるよう設定して平面上に置いて行くことで平面化した.パターンを縫製し,試着して検討を行った結果,適度なゆとりのあるレディスの身頃原型となった. 以上より,進行状況としてはおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は,3Dディスタンスフィールドによるアパレルアイテムの開発,ユーザ評価を行う.本研究の目的であった,3Dモデルから2Dのパターン展開が開発可能となっている.さらに,アイテム数を増やしそのシステムを確実なものにしたい.開発するアイテムとしては,しきい値0.3で,レディスの身頃原型,メンズの身頃原型を開発する.さらに,しきい値0.2でメンズのベストを開発する予定である. その方法は,3Dボディに展開するデザイン線を,2D変換した際にゆがみが少なくなるよう考慮して位置を決めた.バスト,肩甲骨のような凸部は円錐形状と考え,頂点を通る平面で分割した.ウエスト部分は,くびれた円筒形状と考え円筒軸を通る平面で分割した.ポリゴンモデルへ変換された等値面は微小な三角形平面(ポリゴン)で構成されている.曲面を分割するには,個々の三角形をデザイン線に沿って切り分けることで実現する.分割方法は、デザイン線が三角形とどう横断するかに応じて変更する.ポリゴンは2D化した時点で必ずゆがみが生じているため,2Dデータを再度3D化しても元の3Dデータと同一形状にはならない.ゆがみ量を確認するため,バーチャルフィッティングを行った.3D形状を確認してゆがみ量が大きい場合はパターンの修正が必要となるが,今回はゆがみがなく,衿ぐり,袖ぐりの修正のみであった. ユーザ評価として,パターンを縫製して着装評価,インタビュー,アンケート調査を行う.それらを分析し,より良いシステムへと改良する.学会発表は,IEVCにて行う.さらに,画像電子学会誌等に論文投稿をする.
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備考 |
山本研究室 http://www.a-cad.net
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