最終年度である本年度は,3Dスキャンで取得した人体のポリゴンモデルをボリュームモデルへ変換することで,アパレルアイテムのデザインを効率的に行なった.特に体表面を基準とするディスタンスフィールドを定義することにより,体表面から一定の距離を保つ曲面を容易に生成し,正確な「ゆとり」を確保した衣料の設計を可能にした. 体表からの等距離面を定義するしきい値を変化させることで,人体を包む理想的な衣服としての曲面を生成することができる.さらにその曲面上にデザイン線を描き加えることで,実際の縫製に必要なパターンを立体的に設計することができる.デザイン線によってトリミングされた曲面は,ポリゴンメッシュへ変換し,曲率を平滑化する力学シミュレーションを施すことで,最終的に必要な平面のパターンを得ることができる.仮想的に設計されたパターンを実際に縫製し,試着して評価した結果,適切なゆとりと均整のとれた形状が生成できる. 3Dスキャンで取得した人体のポリゴンモデルから,3Dディスタンスフィールドを表すボクセルモデルを構築し,男・女の身頃原型パターンの製作を行った.さらに,男性用ベストの製作も行った.ボリューム処理により,ノイズを廃した高品質なボディーモデル生成と,身体の左右差を廃した審美性の高いトルソーモデルの生成に成功した. バーチャルフィッティング,アパレルCADによりパターンを微修正した.厚手シーチングを用いて裁断,縫製した.縫製はミシンで行い,背中心が曲線であることからオープンファスナーを付けた.試着結果により,フィットした結果が得られたことから,本システムの有効性が示された.
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