研究課題/領域番号 |
19K02338
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
田中 淑江 共立女子大学, 家政学部, 教授 (70636456)
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研究分担者 |
宮武 恵子 共立女子大学, 家政学部, 教授 (40390124)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 着物 / 着物教育 / 着物のコーディネート / 着物の現代的装い / 着物の伝統的装い / 和服 / 着物のアレンジコーディネート / 若者の着物への価値観 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、若い世代が求める新しい着物に対する解釈を明らかにすることである。日本の伝統衣服である着物は、ファッションを楽しむ者には敷居が高い衣服である。しかし近年、伝統的な概念にとらわれず、日常に用いる洋服や小物を取り入れ着物を楽しむ層が存在し、着物に対する変化が見られるようになってきた。本年度は、着物着装の自由度に関するアンケートを行った。さらに着装実験とファッション感性から見る着物着装における画像評価実験を行った。アンケートでは着物の興味の具体性を問うたところ、自らが着用することに興味を持ち、着物が持つ美しさに魅かれていることが具体化した。さらに消費行動では、普段購入する洋服と同じ値段で着物が購入できるなら購入するかの問いに、70%が購入すると答えた。その理由は着物を着てみたいから、洋服と同じ値段なら購入できるから、着物が欲しいから、コーディネートを楽しみたいからの順であった。購入価格が低ければ着物を着装する層を増やせる可能性を示した。更に伝統的な装いと現代的なアレンジの装いに対してはどちらにも好意的な傾向が示された。着装実験では伝統的装いとアレンジコーディネートを実践した。本取り組みからは、異なる着装を実践したからこそ、伝統的装いの美しさ、着物のTPOの理解、さらにアレンジコーディネートが個性を発揮するアイテム、着ることへの楽しみへの理解を深めたことが示された。また学生が行った具体的なアレンジコーディネートは着物の美しさを尊重し、日常の小物を多用し、伝統的着装の問題点を改善する傾向が見られた。アンケート結果と一致する傾向が示された。このように、アレンジコーディネートの可能性への気づきにより、着物に対して親しみ、着装の多様性や創造性へと繋がることが示された。若者世代には着物を柔軟に解釈、受容する感性を秘めており、そこに今後の着物継承の可能性を示唆していると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、本年度は「学会発表」「着装意識のアンケート調査」「着装実践実験」「ファッションクラスター分析」「画像評価実験」を行う予定であった。調査分析に時間がかかったため、学会発表は不可能となった。しかし他の研究に関しては予定通り実施することが出来た。「着装意識のアンケート調査」は、2019年度のアンケート結果を更に具体的に、着物に対する興味の曖昧さや消費者としての行動についてさらに明確にすることも含め約250名の女子学生へアンケ―ト調査を実施した。その後分析を終了し、女子大生の着物に対する意識と消費者としての立場や着装意識に関して明らかにすることが出来た。「着装実験」に関しては実施することが出来、約50名の女子大生のレポートを分析し着装実践と意識の傾向についてまとめることが出来た。さらにファッション感性から見る着物着装における「画像評価実験」は、伝統的な着物着装とファッション性を重視した着物着装に対する好みや判断基準について調査を行った。調査方法は、ヤング層をターゲットとしている2ブランド、今までの着物着装とは異なるファッション性を重視したスタイリングを掲載している雑誌、伝統的な着物着装を掲載している雑誌のインターネットにおける画像を用い被検者100名(被服学科1年生から4年生)を対象に行った。これらの結果を代表者、研究分担者共に次年度論文にまとめる準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はアンケートと着物の着装実践実験を通して、若者が着物のコーディネートをどのようにとらえているのかをある程度明らかにすることが出来た。しかしまだアレンジしたコーディネートの自由な発想はどのように芽生えるのかについては言及が出来ておらず、そこを追求するために、個人対象のインタビューを行うことと、2021年度もさらに「着装実践実験」を追加で行い、実験後のアンケート調査を行い、若者が考える着物に対する新しい概念とは何かを分析しその結果をまとめる。同様に「画像評価実験」に関しても調査は終了しているので、2021年度は画像評価実験のデータを整えて詳細な分析を行う。まず単純集計、クロス集計で全体の傾向を捉える。評価結果を点数化して、クラスタリングを行い、特徴を抽出する。自由記述の理由はKHコーダを用いて、評価の要因を探る。さらに、ファッション志向結果と照らし合わせて、日頃の着装と着物の好みを精査する方向で進める。これらの結果を代表者、研究分担者は共に論文にまとめ広く公開することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により予定していた調査分析サポートのための人件費が執行できなかった。2021年度は状況を見て判断しながら調査分析に経費を使用する予定である。
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