研究実績の概要 |
本研究は,近畿圏内の地場特産野菜の抗アレルギー性を調べ,花粉症などの症状緩和に役立つ食品の発見と特産野菜の市場価値の向上を目指す研究である.2019年度は,ラット好塩基球白血病細胞 (RBL-2H3) を用いて, 過去に購入し凍結保存していた特産野菜11種類のスクリーニングを実施した.その結果,三田ゴボウや若ごぼうの茎部に強い抗アレルギーが認められた.次に、三田ゴボウ・若ごぼうの抽出物を分画し,活性画分を見出し,さらに成分の同定や抗アレルギー活性の分子メカニズムについても併せて検討した. 2020年度には,この抽出物をHP-20ダイアイオンでエタノール分画した結果、40%及び99%エタノール (EtOH) 溶出分画部で脱顆粒抑制作用が認められた。この2分画について濃度依存性と脱顆粒抑制メカニズムを検討した。特に活性の強かった三田ごぼう・若ごぼうの茎部の熱水抽出物をHP-20ダイアイオン樹脂で分画し,高速液体クロマトグラフィー (HPLC) で再分画し,活性成分の単離精製を行なった. 2021年度は, 高純度の抗アレルギー成分を回収し, LC-MS/MS及びNMRを用い成分同定を行なった. その結果, onopordopicrinが活性成分であると同定した. onopordopicrinを含め植物は, 限定的でありその生合成過程については不明な点が多い. onopordopicrinは, セスキテルペノイドのゲルマクラノリドに分類される. ゲルマクラノリドの中で最も単純な構造を持つ化合物は, Costunolideであるが、Costunolideの生合成過程は明らかになっている. しかし, onopordopicrinの生合成過程は, 明らかではない. 従って, LC-MS/MSと全指紋分析を用いて, onopordopicrin生合成経路の推定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スクリーニングの結果より,三田ごぼうや若ごぼうには抗アレルギー成分が含まれることを証明できた.また,これらの食品での抗アレルギー性に関する報告はない.従って,新規の抗アレルギー成分である可能性があると思われる.当初の予定では,2020~2021年に,活性成分の同定を計画していたが、計画通りに抗アレルギー成分onopordopicrinであることを明らかにした. しかし, 2021年度までに動物モデルでの試験を予定しているたが, コロナウイルスの社会情勢を踏まえ,活性成分の同定と合成経路の推定は行ったが, 動物実験は2022年度に計画している.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本研究の予定に加えていた, モデル動物によるごぼう葉含有の抗アレルギー成分の効果について検討する. また, 抗アレルギー成分のonopordopicrinが、RBL-2H3細胞に対してどのような抗アレルギー抑制機序を行なっているかなどについても検討する予定である. 抗アレルギー成分が細胞外でのIgE発現受容体結合のIgE架橋構造に対する抑制か、またはカルシウムイオンに関連して細胞内シグナル伝達での抑制であるかは明らかではない. 従って, 脱顆粒抑制メカニズムについては, カルシウムIonophore A23187を用いて細胞外からのCa2+イオンの流入抑制を測定を行う予定である. 従って、予算については問題なく遂行できる予定である。
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