研究課題/領域番号 |
19K02350
|
研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
中村 寛海 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (00332445)
|
研究分担者 |
野本 竜平 神戸市環境保健研究所, その他部局等, 研究員 (60642238)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | Campylobacter / mP-BIT / バイオフィルム / 好気ストレス / カンピロバクター |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに2011~2014年に分離された食中毒患者由来Campylobacter jejuni/coli (C. jejuni/coli)159株についてmultiplex PCR binary typing(mP-BIT)法を用いた型別を行った。今年度は、さらに2015~2016年に分離されたC. jejuni/coli 298株について、mP-BIT法による型別データを追加した。得られたタイプには任意に番号を付与した。298株中240株のC. jejuniは42タイプ(J-01~J-42)に分類され、最も多く検出されたタイプはJ-27で、C. jejuni 240株中95株(39.6%)であった。2011~4年はJ-35が最も多いタイプであり、J-27はJ-35の次に多かった。これら2タイプから45株を選び、PFGE法により菌株を精査するとともに、PFGEパターンからさらに菌株を選抜し、次世代シーケンサーによるMLST型別およびSNP系統解析を行った。その結果、これらの菌株のPFGEパターンは類似していた。また、J-27タイプのC. jejuniのうち2016年の4~10月に発生した5事例由来17株のSequence type(ST)は22であり、SNP解析の結果、ゲノム配列はほぼ同一であることを明らかにした。主要な2タイプのC.jejuniから12株を選び、トリおよびウシ由来各3株とともに、好気ストレス環境下における増殖およびバイオフィルム形成について調べた結果、好気環境下で72時間培養後に食中毒患者12株中6株、トリ由来3株中2株、ウシ由来3株中1株で濁度の増加が見られた。さらに、食中毒患者由来1株は72時間後にバイオフィルムを形成した。以上より、食中毒を引き起こすカンピロバクターの一部の菌株は空気中で増殖し、バイオフィルムを形成する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食中毒患者由来カンピロバクターを遺伝子型別により分類し、食中毒を引き起こす主要なタイプを特定することができた。これらの主要なタイプの中からさらに菌株を選抜し、次世代シーケンサーでゲノムを解読してMLSTおよびSNP解析を実施することができた。また、菌株数は少ないものの、主要なタイプのカンピロバクターについて、好気ストレス条件下での増殖やバイオフィルム形成を調べることができたので、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
食中毒患者由来カンピロバクター菌株のみならず、食肉や環境のふき取り材料など由来の異なる様々な分離株を用い、好気ストレス環境下における増殖試験を実施する。好気ストレス環境下での増殖の有無で菌株を選抜し、比較ゲノム解析でストレス応答に関わる遺伝子群を特定する。カンピロバクター食中毒の原因施設である飲食店のふき取り材料が入手可能となったことから、これらのサンプル中に存在するカンピロバクター遺伝子をリアルタイムPCR法で定量し、調理環境中におけるカンピロバクター汚染状況の定量的な評価を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高額な消耗品を必要とする実験を予定していたが今年度は未実施であったため、次年度に繰り越すこととした。年度末に参加予定をしていた学会が新型コロナウイルス感染症のため中止になり、旅費の一部が未執行となった。
|