研究課題/領域番号 |
19K02355
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
田中 勝 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70202174)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 伝建地区 / 生活文化継承 / コミュニティ創成 / 居住システム / 町並み学習 / ペーパークラフト / 教材開発 |
研究実績の概要 |
1)学校・自治体・専門家・地域等の多様な連携と協働による町並み保存の担い手育成の実践とその効果を明らかにするため、2018年度科研費で開発した「大原邸ペーパークラフト」を活用し、杵築市教育委員会、杵築市立A小学校、大分県木造建築研究会等の協力を得て伝統文化に関する授業実践を行った。1回目の授業では「まちなみ歴史探検 in 杵築」をテーマに大原邸を含む杵築城下町の歴史的建造物等の見学授業を行い、2回目の授業ではA小学校5・6年生が大原邸ペーパークラフトを組み立てた。学芸員による町並みガイドやペーパークラフトづくりは子どもの郷土を愛する心を育み、歴史・文化を守り伝えようとする態度の育成につながった。次年度以降の町並み学習の実践モデルを得ることができた。 2)伝建地区の生活文化カルテ作成と生活文化継承からみた住まい方評価につなげていくために鹿島市肥前浜宿を対象に季節毎の伝統行事として「浜祇園祭り」と「秋の蔵々まつり」を取り上げて現地調査を行った。蔵々まつりでは伝建地区の多様な空間構成と学校・地域の協働関係が子どもの学びの質を高め、その成果としての町並みガイドが伝建地区の生活文化継承に大きな役割を果たしていた。大分県杵築市では「きつき子ども歴史探検隊」と「きつき子ども歴史ガイド」の活動を調査した。岐阜県白川村では「われらが紡ぐ白川郷かややねプロジェクト」における「合掌造りの屋根組み体験」の取組を調査し、合掌造りの仕組みや生活文化を体験的に学ぶ一般向けプログラムとしての有効性を確かめた。 3)空き家の利活用による居住機能確保のための予備調査として鹿島市伝建地区を対象に空き家修復の実態、利活用事例、移住体験施設等に関する聞き取り及び現地調査や文献調査を行い、次年度以降の研究実施の基礎資料を得ることができた。 4)その他、町並み保存団体向けアンケート実施の準備等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度の研究実施計画に沿って研究に着手し、期間内に一定の成果を得た。その一方で、次の理由により、当初計画どおりに研究が進められない部分が生じたためである。 1)伝建地区の伝統行事(毎年5月中旬開催)が雨天により延期となり、日程の都合から現地調査実施が不可能となった。また、10月には集中豪雨の影響により調査地へ向かうJRが不通となったため、予定していた伝建地区の生活文化調査を実施することができなかった。 2)新型コロナウイルス感染拡大防止により、県外への出張が自粛となり、生活文化継承に関する予定の調査を実施することができなかった。また、各種伝統行事の中止や延期等の対応が伝建地区においても増えたことから、平常時の開催内容が正しく把握できないと判断し、町並み保存団体等を対象としたアンケートは令和2年度以降の実施とした。
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今後の研究の推進方策 |
1)伝建地区の生活文化継承のための伝統行事調査等はモデル地区を増やして継続したい。 2)伝建地区は全国に広く分布していることから、新型コロナウイルス感染拡大及び収束状況を見極めながら研究を実施したい。現地調査については出張自粛の解禁後に実施することとし、それまでの間は文献及びインターネット調査を中心に情報収集を行い、データベース作成や調査票作成等を先行させたい。令和2年4月以降現在も伝建地区では各種行事の中止が続いていることから、町並み保存団体等を対象としたアンケート実施については状況の推移を見守りつつ適切な実施時期・内容を判断したい。 3)伝建地区の空き家の利活用やコミュニティ調査については今年度から重点的に進める予定ではあるが、新型コロナウイルス感染拡大との関係を考慮し、実施可能な部分から着手していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う出張自粛により令和元年度末に計画していた出張を取りやめたこと、また同様の理由によりアンケート実施時期を延期したこと等により、次年度使用額が生じたものである。 令和元年度末に計画していた出張やアンケートによる実態調査はいずれも本研究課題の実施に欠かせない内容のため、次年度実施予定の他の調査項目との整合を図りながら、旅費及びアンケート郵送料等として使用する。
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